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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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B-1

「風間!何回言ったら分かるんだよてめーは!」
なんだかんだで始まった5月。
この日も下島の罵声を浴びながら日勤が終わりを告げようとしている。
…この人の扱いにも慣れてしまった自分が悲しい。
「はーい、スイマセン」
と言っておけば9割は丸くおさまる。
次第に業務に慣れて来た陽向だったが、慣れたのは業務だけでなに一つとして看護には役立っていなかった。

「この人、なにしたら退院できるの?」
5月のとある日、リーダーだった高橋に問われる。
「あー…えっと…」
すかさずフォローであるプリセプターの言葉が入る。
「この人は、退院指導もまだで、自宅環境も整ってないんで支援センターに問い合わせてみてから介護申請とかもやっていこうと思います」
「うーん…だよねぇ…。支援センター介入しないとヤバイかもだよねー」
そんな言葉が飛び交うが、陽向は何も分からずにいた。
「あの…支援センターって…」
報告の後に進藤にそう言うとまたあのクリッとした目で「えっ?!」と言われ怖気づく。
「あ、えっと…支援センターって何ですか?」
進藤は「知らんのかお前?」と言った目でこちらを見据えた。
「今までこーゆー患者さんいなかった?」
「えと…いたんですけど、ちょっとよく分からなくて…」
「分かんなかったらその時フォローの人に聞きなよ。あー…なんでもー…分かんないことそのままにすんの!」
怒られながら支援センターについて聞く。
どうやら、介護申請やケアマネージャーの必要性のある人が、退院するために必要な資源を獲得するために介入するところらしい。
「看護師がやっちゃダメなんですか?」
「別にいーんだけど…。ケアマネとか地域包括支援センターとかといちいち連絡とるの大変でしょ。…ましてやこの業務の多さだし。だから、支援センターの人にそーゆー流れは任せるの。ちなみにカンファレンスとかもあるから、その時は参加しなきゃいけないからさ。覚えといてね」
「…はい、すみません。ありがとうございます!」
なんだか難しい話だけれど、大まかなことは理解した。
怒られ、そして心配されながら1日を終える。
年取ると、入院したら大変だな…と思う陽向であった。

今日は同期会だ。
5月15日、同期の皆と駅前の居酒屋に集まる。
「てかまじ瀬戸さん怖いんだけどー!」
ビールを飲み酔っ払った矢野瑞希が言う。
瑞希は見た目からして結局チャラいキャラだ。
この時期にして研修医を何人か引っ掛けているらしい。
短大時代から瑞希と仲のいい榛葉七瀬が「わかるー!」と声を上げる。
七瀬は短大時代、生徒会長的なのをやっていたらしい。
場をまとめるのはいつも七瀬の役だ。
でも、しっかり周りを立ててくれる。
本当に人思いのデキた人間だ。
あと2人の吉村律と桐谷青葉も瑞希、七瀬と同じ短大卒だ。
りっちゃんこと律は、容姿端麗でかなりモテる。
でも、性格はアホでかなり面白い。
おしとやかな見た目とはちょっとギャップのある子。
桐谷青葉は女子の鏡と言っていい程よく出来た女子。
おしゃれな部屋に住み、おしゃれな料理を作っているのだ。
ちなみに趣味はヨガ。
典型的な働く女子である。
そんな4人プラス、ゲスの極みとも思われる楓と陽向の6人が今年度の新入生だ。
かなりキャラの濃いメンツだとこの時期からひしひしと感じる。
この日の話題は世界一つまらない病棟の話だ。
でも、愚痴は止まらない。
「まじで瀬戸さん怖くない?!この間、そんなんなら受け持たなくていい!ってキレられたんだけど!」
瑞希が興奮気味に言う。
「それ、あたしも言われた!怒るのが趣味なんじゃね?」
「どんな趣味だし!人間性疑うわ!」
ケラケラ……いや、もっとはしたない笑い声が場を包む。
こんなに似た者同士が集まるなんて奇跡に近い。
6人いれば、合わない人は誰かしらいるはず。
でも、みんな波長が合うのだ。
不思議な、奇跡の巡り合わせだと思う。

「このメンバーで辛いことも楽しいことも乗り越えていく……」

ふと、看護部長の言葉が過る。
みんなとなら、やっていけるはずだ。



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