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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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A-6

「…た」
誰かの声がする。
「陽向…」
ゆさゆさと身体を揺すられている。
ぼやんとした頭に響く、大好きな声…。
「陽向」
今度ははっきりと聞こえる。
目を開くと、湊が心配そうな顔をしてこちらを見ていた。
「あ…」
「どーした、こんな時間に」
陽向はその言葉を無視し、湊に抱きついてパーカーに顔を埋めた。
「どした?」
優しく頭を撫でてくれる。
「つかれた…」
「はは。俺も」
湊は陽向の背中を優しく撫でながら笑った。
「ひな…こっち向いて」
「いや」
「顔見せて」
「や」
「…あそ」
久しぶりに会うのに、泣き腫らした顔なんて見せたくない。
泣いてしまった今日という日を恨む。
「コーヒー飲むか?昨日、買ったやつ」
「…飲む」
湊は陽向の頭をぐしゃぐしゃと撫でて立ち上がった。
しばらくしてコーヒーの良い匂いと共に湊が戻ってくる。
陽向はクッションに顔を埋めたまま動かなかった。
「ほれ、飲みな。美味いぞ」
「……」
「おめーが飲むっつったんだろーが」
「じゃあ顔見ないで」
「はいはい」
陽向は着ていたパーカーのフードを被って目まで隠した。
「不審者かよ」
「うるさいな。見ないでよ」
コーヒーを手に取ろうとしたその時、湊に腕を掴まれ、ソファーに押し倒される。
「いやっ!」
両手を抑えられ、パーカーのフードが取り去られる。
「やめてよ!見ないでってば!」
陽向は顔を逸らして目を瞑った。
湊の顔が近付いてくる。
「陽向。こっち向いて。お願い…」
耳元で優しく囁かれる。
陽向はその声に負けて湊の方に顔を向けた。
腫れぼったい目で湊を見据える。
「泣いたんか?」
「見れば分かるでしょ」
「そんな怒るなよ」
「怒ってない」
湊は優しく微笑むと、両手を解放し、陽向のほっぺたを両手で包んだ。
慈しむような手つきで頬を撫でる。
「ちゃんと寝てる?」
「寝てない」
「ご飯食ってる?」
「おにぎり食べてる」
「ナスは?」
「食べない」
「嫌いだもんな」
湊が笑うと、陽向もヒヒッと笑った。
「やっと笑った」
湊は満足そうにすると陽向を起こして、優しく抱き締めた。
「仕事でなんかあった?」
コクっと頷く。
「ミスしたの」
「俺も今日ミスった。もうやらなくていいって怒鳴られた」
「同じだね」
「そ、同じ」
「湊もミスするんだ」
「そりゃー誰だってするっしょ」
「落ち込まないの?」
「落ち込むよ」
「仕事行きたくならないの?」
「ならないよ」
「どーして?」
「料理が好きだから」
湊は陽向を離して目を見て言った。
「嫌いな仕事だったら辞めてやるって思うけど、好きなことなら辛くたって続けられるだろ。何がいけなかったんだろうって考えて、同じこと繰り返さないよーに気を付けようって思うだろ。ま、言い方とかで頭くる時もあるけどさ」
「そういう風に考えられる湊は偉いね」
「どーゆー事だよ」
「あたしは、もうやだって思ってすぐ泣いちゃうから。そーゆー自分が嫌いなの。好きなことでも、もう働きたくないって思っちゃうの」
また泣きそうになる陽向を見て、湊は弱々しく笑った。
「お疲れだな、ひな坊」
湊は陽向にキスをして髪を撫でた。
「風呂入るか?」
「入る」
「今日はお湯ためてゆっくりするか」
「する」
冷めたコーヒーを一口飲む。
甘いような苦いような味がした。

バスタブに浸かると、お湯が大きな音を立てて流れ落ちた。
向かい合って座る。
「ひな、こっちおいで」
湊の脚の間に座ると、お湯で目の周りを優しく撫でてくれた。
「今日はアイスノン当てて寝な」
「うん」
「てか、また痩せた?」
「痩せない」
「なんか、すげー心配になる」
「大丈夫だよ」
湊を見据えると、「おでこ出してんのもいーね」と言われた。
「今日だけさ…」
「ん?」
「甘えてもいい?」
陽向がそう言うと、湊は「いつも甘えん坊じゃねーかよ」と言って陽向のおでこにちゅっとキスをした。
「違うもん」
湊の首に腕を回して身体を密着させる。
「お前がそんなことすっから……ったく」
「へ?」
お腹の辺りに硬いものを感じる。
「湊…疲れてるでしょ?」
「お前だって疲れてんだろ」
「疲れてる…」
「じゃあ、今日はとことん疲れる?」
優しく笑う湊を見て、陽向も照れ笑いする。
「久しぶりだね…」
「そーだな」
「1人でやってるんでしょ」
「んー…たまに」
「あははっ。男はそーだよね」
「でも」
湊は陽向の濡れた髪を掻き上げてこめかみに手を添えた。
「お前がいなきゃ嫌だ」


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