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夜羽球の会
【調教 官能小説】

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合宿-2

◆◆◆

「以上のような経緯で、彼女はタツミ君を我々から遠ざけたそうです」
 薄暗い無機質な空間。コンクリートの壁で覆われた灰色基調の部屋で、声がスピーカーから響く。三十人ほどの男がイスにふんぞり返り、その前にある小さな壇の上で、で黒縁のメガネをかけた細身の男がマイクを持っている。ワックスできっちりと髪型を決めた、夜羽球の会の会長であった。
「他のサークルの方で十分な数の新入生は獲得したので、タツミ君一人が抜けたところで我々の活動に支障はありません。しかし、佑香里さんの行いについては問題視しないわけにはいきません」
 何人かの男がうんうんと首を縦に振る。
「私の所属する夜羽球の会や、皆さまの所属される各サークルはすべて、宗教法人<夜の会>の系列にあります。ゆえに、我々はその教理に則り、救いを求める迷える人々に手を差し伸べ、世にはびこる悪魔に対峙していく責務があります」
 夜羽球の会の会長は声のトーンをあげ、大げさな身振りを添えながら弁舌をふるう。
「タツミ君は救いが必要だった。我々ならば、彼の魂を楽園へ導くことができた。それにもかかわらず、我々の同胞として身を献じ、多くの仲間を救ってきた佑香里さんは彼を地獄へ追い落としてしまったのです!」
 部屋は静まり返っていて、会長の話す言葉がエコーする。まるで映画のワンシーンのように、迫力と緊張感をもった空気がそこには満ちている。
「しかし、我々は彼女を責めてはならない! 彼女は悪魔に憑かれただけなのです! とり憑いた悪魔にささやかれて、彼女はタツミ君を見離してしまっただけなのです! 彼女もまた、我々の救いを必要とする憐れな魂なのです!」
 会長は力強く、右の拳を天に突きだした。
「今こそ、我々が力を合わせて、彼女の中に巣くう悪魔を打ち滅ぼさねばなりません! 多くの仲間を救ってきた聖母のような彼女を、我々の手で救い出さねばなりません! さぁ、皆さん! 共に彼女の魂を救い出そうではありませんか!」
 キンキンと耳に響くほどの大声で会長は聴衆を煽る。すると、その場にいた男たちはいっせいに立ち上がって右手を突き上げた。
「今こそ悪魔に粛清を!」
「今こそ悪魔に粛清を!!!」
 会長の音頭に合わせて、聴衆も掛け声をあげる。その音はまた壁に反射して、ぐわんぐわんと空間をねじ曲げるようだった。狂気じみた熱気が舞い上がる。雄叫びが飛び交い、全員が闘志に満ちた瞳を輝かせていた。

「それでは、この場に悪魔を呼び寄せましょう」
 会長はそう言うと、ポケットにしまってあった無線を取り出してぼそぼそと何かをつぶやいた。すると、部屋を端にあるコンクリートの扉がゆっくりと開き、数人の黒服の男が入ってきた。黒服たちは全員で一本の鎖を握っている。その鎖に繋がれて部屋に入ってきたのは、上半身を十字架にくくりつけられてそれを背負う全裸の佑香里だった。足首には中世の黒人奴隷のように鉄球の重りが繋がれている。

「やだやだやだやだ! ごめんなさいッ! お願いっ、お願いだから許して! 許して、許してください!」
 目隠しをされて引きずられるようにして壇上へ連れられた佑香里は、ガタガタと震えながら狂ったように叫び声をあげていた。
「ご覧ください、彼女は今、真の人間としての魂が悪魔に犯されつつあるのです。なんという憐れな姿でしょう。一刻も早く、彼女に巣くう悪魔を退治してやらねばなりません」
「いやっ、イヤイヤイヤッ! 私は悪魔なんかじゃない! 何もしてない! やめて、許してっ! お願い、会長さん信じて! お願いっ!」
 会長の声を聞いて、佑香里はさらに声を荒げる。
「皆さん、耳を貸してはなりませんよ。これは悪魔が彼女を操って話しているのです。悪魔に与える同情などはありません。我々は佑香里さんを救い出すために、この悪魔を徹底的にこらしめるのです! さぁ、それでは皆さんに悪魔の本性をお見せしましょう!」
「いやぁああああああああぁ! ちがうっ、ちがうちがうちがうッ! やめてっ、許してっ! いやぁああああああああああああああああああああ!!」
 黒服が佑香里の身体を押さえつける。全力で佑香里は暴れるが、重い十字架に動きを制限されて抵抗も満足にできない。六人の黒服が力一杯その左腕を押さえつけると、一人がポケットから注射器を取り出した。発狂する佑香里をちらりと一瞥すると、黒服は無表情のまま注射針を左腕に突き刺した。
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
 注射器のピストンが押される。ゆっくりと中の透明な液体が注入されていく。全身にびっしょりと汗をかいて、佑香里は左腕以外を思い切り暴れさせる。黒服はそんなことは気にもかけず、中身をすべて体内に送り込んだ。
 やがて、佑香里の暴れ方は小さくなっていき、最後には糸が切れたように全身から力が抜けて倒れ込んだ。





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