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吐息の会話
【その他 官能小説】

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吐息の会話-3

(3)


 全裸になったぼくに麗華は真剣な顔を近づけて言った。
「これは大事なことなのよ。そして秘密にしておかないといけないの。おばさんが特別に教えてあげることだから誰にも言っちゃだめよ。いいわね」
ぼくは声が出ず、それでもはっきり頷いた。

 それからの出来事は衝撃の連続で、ぼくは現実感を失った感覚のまま麗華に身を委ねた。
 ペニスを握ると皮を引き、亀頭を剥き出した。
「あ、おばさん……」
「痛かった?」
「痛くないけど……」
自分でも全部剥いたことはなかった。いつに間にか息が乱れていた。
「さっきも言ったけど、こうしないと大人になれないのよ。それにきれいにしないと」
シャワーをかけられ痛みに似た快感に思わず呻いた。
「洗うわよ」
言うなり、間を置かず先端に石鹸をつけて掌でこねた。
「ああ……」
電流が走ったみたいにビリビリと貫く心地よさ。
「すぐ終わるから」
シャワーのお湯があたるだけでものけ反ってしまうほどの刺激だった。

 湯を弾いて真っ赤に充血した丸剥けの亀頭は自分のものとは思えなかった。不随意に跳ねるペニスは震えているようでもあり、これまでにない硬直の様相は苦しさに悶え苦しんでいるようでもあった。

「すごく元気ね」
麗華の息遣いも荒くなってきていた。
「いまのところ問題ないようだけど、もっとチェックしないとね。動いちゃだめよ」
言いながら膝をついた麗華の口が開き、肉茎が吸い込まれていった。

(ああ……)
 驚いたが、声が出ず、息を呑んだ。その驚きを吹き消すように凄まじいまでの気持ちよさが突き上げてきて、その衝撃に前のめりになった。
「うう……」
麗華はペニスを呑み込むほどに咥えたままぼくの尻を両手で抱えて顔を振った。
「ああ、出ちゃう」
 ドクン、ドクン……。
(精液が、口の中に……)
過敏さを増した亀頭に舌が絡んでくる。
「あああ……」

 痙攣が治まっても麗華はペニスを離さなかった。精液を飲み下し、小さくなったペニスを吸い上げ、しゃぶった。目を閉じて、酔いしれたような表情であった。

「いっぱい出たわね」
ようやく解放された時、ペニスはふたたび勃ち上がりかけていた。
「すぐにおっきくなったわね。健康な証拠よ」
そうしてペニスをまじまじと眺めた。
「きれいな色だわ……」
溜息まじりに言い、立ち上がった麗華はぼくの頬を両手で挟んで顔を寄せて微笑んだ。
「びっくりした?」
「……はい……」
「ごめんね。でも、大人になるとすることなのよ」
笑いかけた顔が真顔になった。
「もうちょっと、教えてあげようか?」
ぼくに訊いておきながらすでに決めたように麗華は行動した。

「待っててね」
ぼくをそのままに脱衣所に戻り、間もなく麗華は全裸で現われた。
 それからは彼女の指示のまま女体のすべてに触れ、挿入にまで至った。
男女の性愛も知らないのに、言われるまま乳首を舐め、女陰に指を入れ、導かれて割れ目にも口をつけた。
 『教える……』と言いながら麗華は情欲のままに昂奮していたと思う。思いがけずおとずれた状況に理性を失ったものとみえる。
「そこ、そこ、その硬いところ、もっと舐めて」
割れ目の上部を自ら指先で開きながら股間を押し上げてきた。クリトリスを剥き出していたのだとあとからわかった。

「もう、だめ……いらっしゃい……」
開いた脚の間に引き寄せられ、ペニスを摘ままれたと思ったら滑らかな感触に包まれた。
「ああ、若い子……童貞は初めて……」
この言葉はもはやうわ言のようであった。

 夢中で突き立て、麗華にしがみついて放出した。
「あうう……」
煽り立てる彼女の腰。ペニスが扱かれ、ぼくは無意識に麗華の唇を貪っていた。口紅のにおいがむっと漂ったのを憶えている。

 その態様だけを見れば男女の愛欲をぶつけ合った熱烈なセックスである。だがその時のぼくに快楽を楽しむ余裕などなく、肉体的快感に翻弄されるばかりだった。戸惑いすら過る間もなく性の嵐に巻き込まれた印象であった。

 あとから考えると性急に事が運んだことで余計な悩みに惑わされずに済んだ結果になった。
(一気に大人になった……)
感激もなく呆気ないものだったが、初体験とはこんなものなのかもしれない。少なくとも性を楽しむ余裕などあるはずはない。

 その日、夫婦の寝室でもう一度セックスをした。その時もぼくが上になり、正常位で行った。これはぼくにとって意味のあることだったと後に思ったものである。つまり、初めに女を組み敷いた形を経験したことで、征服欲というか、『男』の体面を保ったような満足感が知らずうちに心にあったように思う。未熟な少年が大人の女の上に重なってペニスを差し込んだのである。
 麗華がぼくを『男』にする配慮をしてくれたのかどうかはわからない。おそらく我を忘れて燃え上がるままに好みの体位に引き込んだのかもしれない。だが、結果としてぼくにはセックスを成し遂げた達成感のような能動的な想いが残り、備わったように思う。
 
 




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