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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵
【フェチ/マニア 官能小説】

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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 3.-13

 しかし陽太郎を苛んでいたのは、射精してしまった後悔だけではなかった。陽太郎はパンプスの中の趾を痛みつつも、だんだんと歩幅が広く早くなっていった。自宅にたどり着くと急かされるようにドアを開けて中に滑り込んだ。息が荒くなっている。早足だけのせいではないのは自分でも分かっていた。靴も脱がないまま雑誌の入ったビニール袋を足元に落とし、ドアに凭れるとタイトスカートをヘソ下までたくし上げた。
 自分の下腹部を見下ろすと異様な光景があった。毎日の女装がやめられなくなっていた。化粧の練習でも、女らしい仕草の練習でもなく、女の姿に化けたいから女装をしていた。鏡に映った自分の姿を見ると鼓動が高鳴る。友梨乃に好かれる自分が愛おしかった。ネットショップでメイク道具を見るときはより煽情的に飾れるものを選んで見るようになったし、レディースの衣装もスカート、しかもなるべく丈が短いのものに目が行くようになった。そしてそれを身につけると、必ず自慰をしてしまった。毎日しているのに夥しい射精が起こったし、放出したあと鏡を見ていると再び劣情を催してきた。友梨乃の理想に自分が近づくにつれ、妖しい興奮が蝕んでくるのだ。捲ったスカートの下には、脚の付け根へ耐熱ラップが何重にも巻かれていた。そして透明のフィルムの向こうには黒い小さな三角形があった。外観で見える部分に気を払うのは女装とはいえ「ファッションだ」と言い張れた。だがその仮飾の下で女性物の下着を身につけていることについては何の言い訳もできない。男物に対して圧倒的に少ない布地のショーツを、声が出そうになりながら脚を通し、下腹部に引き上げると、肌を覆う面積の心許なさに、美女の姿になっても自らの体に生え残る忌避すべき男茎に興奮がモヤついた。ネット上の誰とも知らぬ女装趣味の持ち主のアドバイスだった。女の姿で街をねり歩く時に興奮して勃起してしまって衣服にその形を浮かび上がらせないようにするために耐熱ラップを腰さらしのように巻きつけること。この方法は、脚の付け根が圧迫されて可動域が狭められるから自然と女っぽい内またな歩き方になって一石二鳥。記事を読んだ時、アドバイスの主を変態だと内心笑った。しかし初の外出で緊張して勃起などするはずがないと思っていたのに、帰宅した自分の下半身では耐熱ラップの中では男茎が完全に膨張して、狭い中懸命に上を向いていた。自分も同じ変態に成り下がってしまったのだ。
 爪でラップを切り裂きたかったが、幾重にも重ねられたラップは容易には裂けなかった。もどかしい手で終端を探し、急いで剥ぎとっていった。ショーツを指で横にズラすと勃起が飛び出して亀頭を揺らす。
「うおっ……!」
 コンビニの店員、警官、早稲田通りですれ違った人々の視線を思い出す。自分を見ていた。誰も気づいていないのに、スカートの中でこんな汚らしいモノを硬直させていた。玄関に立ったまま目を閉じて、指を先端に触れさせるや否や、先端から夥しい噴射が部屋の中へ向かって撒かれた。指の感触に誰を仮託していたか――、瞼の裏に映ったのは友梨乃だったのか鏡の中の女だったのか、あまりの恍惚に定かではなかった。




 友梨乃は膝立ちになって陽太郎にしがみついていた。陽太郎の指は友梨乃のスカートの中に入り、潤った体の内部に指を深く埋めている。
「き、気持ちいいっ……」
 時折友梨乃は陽太郎に訴えた。陽太郎が中で指を曲げて、友梨乃が腰を揺すってしまう場所を圧迫すると、背を仰け反らせて高い声を漏らす。「んっ……! 陽太郎くんっ……、いっぱい……、してる。私……、気持ちよくなってるっ」
 友梨乃は陽太郎に呼びかけながら、自分自身に対しても訴えていた。陽太郎の手で淫らな反応を示せていることはたまらない悦びだった。たとえスカートの中から、淫らな水撥ねが聞こえても、羞恥よりも幸福感が勝った。
「ユリ、さん……、いく……?」
「うんっ……。陽太郎くんに、……されたい」
「ユリさん……」
 アイラインが艶かしく縁取られた視線に見上げられた。キスを迫られている。その美しい顔に吸い寄せられるように友梨乃は唇にしゃぶりつくと、中を抉る指の動きに呼応するように自ら舌を差し入れて音を立てて啜った。
「んっぐ……、よ、陽太郎くん……、い、……」
 言ったほうが陽太郎が喜ぶと思った。今の自分にしてくれた陽太郎を喜ばせたかった。「いかせて……」
 震える声で言うと、陽太郎の指が早く強く友梨乃を慈しんできた。グイッと指を押し付けられると、雫が垂れ落ちる感触を覚え、一気に絶頂がやってきた。
「いっ……、くっ……!」
 何度も腰を痙攣させて、絶頂の中で背中を駆け抜ける性感に脳髄が灼け溶けてしまいそうになりながら、このまま陽太郎にされ続けれていればきっと近いうちに友梨乃が憧れる本物の女になれると思った。やがて自分をそこに導いてくれるだろう陽太郎がたまらなく愛しい。
「ん……、あ……、陽太郎くん……」


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