投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

鍵盤に乗せたラブレター
【同性愛♂ 官能小説】

鍵盤に乗せたラブレターの最初へ 鍵盤に乗せたラブレター 43 鍵盤に乗せたラブレター 45 鍵盤に乗せたラブレターの最後へ

想いの詰め合わせ-2



 ――10月。
 秋風が並んで歩いていた冬樹と勇輔の頬を撫でた。校庭に落ちていた赤い葉が数枚、浮き上がって彼らの前をすっと通り過ぎ、そのまま空に舞い上がった。
「寒っ」思わず冬樹は勇輔に身を寄せた。
「お、おいおい、あんまりひっつくな。みんなに怪しまれっぞ」
 勇輔は赤くなって焦ったが、冬樹の身体を押しのけたりはしなかった。

「冬樹ー」
 背後から明るい声がした。二人はとっさに振り向いた。
 うららが息を切らして自転車を漕いでやってきた。
「なんだ、おまえか、妹」
「『なんだ』はないでしょ。それにあたしちゃんと『うらら』って名前がついてんだから、正しく名前で呼んでよね」
「おまえだって俺のこと『がさつな兄貴』とかって呼ぶじゃねえか」
 隣で冬樹がくすくす笑っていた。
「で、何か用か? 妹」
 うららはふくれて勇輔を睨みながら言った。「教えんの、よそうかなー」
「わーったよ」勇輔はいらいらして大声を出した。「悪かったよ、うらら」

 うららは一転にっこりと笑って冬樹と勇輔を交互に見た。
「あなたたち、静かなブームになってるよ」
「静かな?」
「ブーム?」
「そ」
「何だよ、それ」
「男同士の理想的なカップルだ、って」
「な! なんだと?!」勇輔がまた大声を出した。「し、知られてんのか? みんなに」
 うららは呆れたように言った。「雰囲気でバレバレだよ」
「や、やべーな」勇輔は慌てた「お、俺たち、な、な、何にもしてねえからな」
「自分で白状してるも同然だね。何かやってます、って」うららは涼しい顔で言った。「でもね、人前での態度が爽やかでスマートでかっこいいんだって」
「爽やか?」
「うん。なんかさ、男同士のカップルって、もっとこう、どろどろしてる、っていうか、なりふり構わず抱き合ったり、露骨にキスしたりするっていう先入観があるじゃん」
「あるんだ……」
「だけど、兄貴と冬樹、人前でそんなことしないし、逆にこそこそしたりもしないし、会話も結構オープンだし。ある意味みんなの目からウロコ落とした功績が評価されてるんじゃない?」
「なんじゃそりゃ」勇輔は呆れた。
「冬樹もあれから水泳部のみんなにかわいがられてるじゃん。三年の女子の先輩からも」
 うららは冬樹に目を向けた。
 冬樹は恥ずかしげに頭を掻いた。「そ、そうだね……」

「それに、兄貴がいつも冬樹を教室に呼びに来る時も、気負いなく気軽だしね。うちのクラスの男子にも女子にも、兄貴の好感度、かなり高いよ」
「そ、そうなのか?」
「うん。後輩の恋人をすっごく大切にしてる先輩、って感じがするんだって」
「な、なんでそんな感じがすんだろーな」
「直接声を掛けるからじゃない? メールなんかじゃなくて直接」
「しょーがねえだろ、こいつケータイ持ってねえんだから」勇輔は冬樹のこめかみのあたりを指で軽くつついた。
「今時珍しいよね。なんでなの? 冬樹」
 冬樹はあっさり答えた。「あんまり必要感じないし」
「へえ」うららは意外そうな顔をした。
「メディアを介したデジタルの文字だけじゃ想いは伝わらないよ」
「なんか難しいこと言ってんな、冬樹」勇輔が言った。
「そうだよね」うららがにこにこ笑いながら言った。「冬樹は想いを伝える方法、いっぱい知ってるもんね」
「なるほどな」勇輔もにやりと笑って冬樹の頭を撫でた。冬樹は顔を赤くして勇輔を見上げた。
 うららが言った。「そういう二人の仕草も、なんかほわんとしてて素敵なんだってみんな言ってた」
 勇輔も少し頬を赤らめて顎に手を当てた。「な、なんか褒められてねえような……」
「褒めてるんだよ」

 気がつくと、校庭の隅に溜まっている生徒や、テニスコートのテニス部員らが、こちらを見ながらにこにこしている。

「ね、誰もひそひそ怪しげな噂してる風じゃないでしょ?」
「い、行くぞ、冬樹。なんかいたたまれなくなってきやがった」
 勇輔は顔を赤らめ、冬樹の肩をぽんと叩いて、自転車を押しながら歩き始めた。
 冬樹もうららも続いた。

「ねえ、『シンチョコ』寄ろうよ」
「シンチョコに?」勇輔が言った。
「うん。いいでしょ? 冬樹も」
 冬樹はにっこり笑った。「いいよ」


鍵盤に乗せたラブレターの最初へ 鍵盤に乗せたラブレター 43 鍵盤に乗せたラブレター 45 鍵盤に乗せたラブレターの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前