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鍵盤に乗せたラブレター
【同性愛♂ 官能小説】

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思い込み-1

 翌週の月曜日、部活帰りの勇輔は、いつものように一緒に学校を出た冬樹と交差点で別れた後、一人で『シンチョコ』を訪ねた。
 勇輔はまっすぐアトリエに向かい、ガラス越しに中でチョコクッキーを焼いているケネスに目配せをした。
 その何かに祈るような勇輔の目に気づいたケネスは、顔を向けて言った。「テーブルで待っとり、すぐ行くよってにな」
 勇輔はこくんと頷くと、店内の喫茶スペースに足を向けた。

「ごめん、おっちゃん仕事中に」
「ほんまやで。せめてアポよこしてからにしてくれへんか?」
「ほんとにごめん。手が離せないんだったら、出直すよ」
 ケネスはふっと笑った。「殊勝やないか。ええで。わいもおまえに話したいことあるし」
 勇輔は小さく首をかしげた。「俺に?」

 ケネスは勇輔と向かい合って椅子に腰掛けた。
「まずはおまえの話から聞いたるわ。なんや、どないした」
「あ、あのさ、」勇輔はもじもじしながら赤くなってうつむいた。「ア、ア……、」
「?」
「ア、ア……」
「おまえは『千と○尋の神隠し』のカオナシか」
 勇輔は顔を上げ、意を決して言った。「ア、アナルセックスのほ、方法を、教えてくれない?」

「やっぱりそう来たか……」ケネスはため息をついた。
「え?」
「おまえがきっとそういう相談を持ちかけるんやないか、って思ってたで」
「そ、そうなの?」

「ええか、よう聞くんやで、勇輔」
 勇輔はこくんと頷いた。
「はっきり言うで、そんなん、止めとき」
「え?」
「アナルセックスなんて止めとき、っちゅうたんや」
「……」
「先週の土曜日、冬樹がおまえんちに泊まった時に挑戦した。そやけどできへんかった。ちゅうことなんやな?」
「な、なんでわかる?」勇輔はケネスの顔を見た。
「話の流れとおまえらの行動でわかる、っちゅうもんや」
 勇輔はうなだれ、背を丸めた。「そうなんだね……」
「まあ、おまえもネットやビデオでぎょうさんゲイビデオ見たんやろけどな、あれは虚構や。見るもんを興奮させるためだけのな。本人たちはみんながみんなあれで満たされとるわけやないねんで」
「そう……なの?」
「まあ男っちゅうもんは射精すれば気持ちええ動物やから、とりあえず最後に射精して気持ちよくなっとるやろけど、初心者がアナルで気持ちよくなることなんか、ほとんどあれへん。そもそもおまえらには似合わん。止めとき」
「そうなんだ……」
 勇輔はケネスと目を合わせることができないでいた。

 ケネスは席を立ち、レジ横のデキャンタから二つのカップにコーヒーを注いでテーブルに戻った。
「ほれ、おまえのために甘甘のクリームもぎょうさん持ってきてやったで」
「え? クリーム?」勇輔は顔を上げて小さく言った。

 先にカップを持ち上げ、コーヒーを一口飲んだケネスは静かに話し始めた。
「エロビデオの演出みたいなんはな、ほんまに想い合っとる二人がやることやない」
 勇輔はテーブルのカップを見つめながら言った。「お、俺、冬樹がやりたいことをさせてやりたいんだ」
「冬樹がやりたいこと?」
「あいつが俺に突っ込んで気持ちよくなって欲しくて……」
 ケネスは静かに言った。
「アヌスは元々そんなことする場所やない。清潔にしとかなあかんし、ほぐして長いこと馴らしとかなあかんし、ローション使こたりしてめっちゃめんどくさいんやで」
「そう……だけど」
「へたしたら、相手を傷つけてしまうかも知れへん。突っ込む方も突っ込まれる方も。そないなリスク犯してまでやる意味ないやろ?」
 勇輔は黙っていた。


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