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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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奸計2-2

「そのときはこんなふうになるなんて思ってもいなかったから、ばかみたいにはしゃいで……でも、父を裏切るなんて、やっぱりひどすぎます」
 感情の起伏は押さえようもない。自分をも裏切った、と言わないところに利発さを感じた。
「こんなことを申し上げますと気分を害されるかもしれませんが、結婚していても他に愛する人が現れてしまうことは、ままあることなのです。あなたにはまだ理解しがたいことでしょう。もちろん理想は生涯夫婦が仲良く暮らすことですが、人生にはイレギュラーが発生する場合がございます。今回がそれです。わたくしは、そのような方々を数多くみています。恥をさらしますが、実はわたしの妻もそれでした。浮気調査をしている夫の妻が浮気しているのですから、お笑いぐさです。先ほども申しましたが、全てわたくしがいたらなかったせいです。従ってあなたのお母様のケースとは違います。妻はわたしを嫌悪していましたから」
 沼田は自嘲気味に笑う。ぬけぬけと、という意味もある。
「でもそれは、同じことだと思います。不潔です」
 今までになく恵の声は大きかった。
「昔はある程度身分の高い男は側室を持っていました。子孫繁栄というより男系男子を絶やさないため、また女子の場合政略結婚に用いられました。取っ替え引っ替え側室を抱いて楽しむといった側面も大いにあります。人は業の深い生き物です。古来からある性風俗産業が世の中がどのような状況でも衰退しないのもそのひとつでしょう。一夫多妻制もしかり。現在だって妾や愛人を持っている男はたくさんいます。実はその逆も多いのです。二股を楽しんでいる未婚の女性だってたくさんいます。芸能人に限らず不倫は枚挙にいとまがございません。肯定するわけではありませんが、そういった方たちが全て汚い人間ということではないのです。人は理性ではあらがえないものがあるのかもしれません」
 うまく説明できただろうか。恵は無言だった。沼田ははっとして立ち上がり、冷蔵庫からチョコレートを取り出した。「どうも気が利かないもので。これお茶請けにどうぞ」と頭をかいた。
 恵は押し頂くように受け取り、「見せてください」と言った。何を見たいのかわかったが沼田は「何でしょう?」ととぼけた。
「母たちを調査したときの、映像とか写真があれば見せていただきたいのです」
 決然と言う。
 沼田は「本当にご覧になるのですか?」と、いぶかしげな顔を作る。恵はしっかりとうなずいた。恵の性格上、必ずそう言うだろうと思っていた。今日来たのはそれが目的であろう。
 石橋の音を消したDVDが欲しいとは、さすがに石橋に頼めない。沼田はそれは必死で勉強した。これほど脳みそをフルに使ったのは受験勉強以来であった。今後使用することはないであろうDVDライターとポータブルプレーヤーを買う必要があった。かくして無音のDVDをつくることに成功したのだ。恵に見られるとまずい部分も消すことができた。学生時代に原付免許を取得したときのような達成感だった。
 音声がないことを聞かれたら適当にごまかそうと思っている。もっとも映像が衝撃的すぎて、そんなことを考える余裕もないだろう。お義理でやめた方がいいと忠告したが、見ると言い張った。
「これらは全て会社からくすねたものです。個人情報なので持ち歩いてはいけないものなのです。あなたのように踏ん切りをつけるため――と思いますが、証拠を見たいと所望される場合がございます。そのため、わたくしは法を犯して持ってまいりました。ただし写真は持ってくることができませんでした」
 恩着せがましく説明して、ポータブルプレーヤーをベッドの上に置いた。
「しばらく外に出ます。終わりましたら携帯電話に連絡ください。時間は気にしなくて結構です。何時間でもかまいません。コーヒーは温めてありますし、冷たい飲み物の方がよければ冷蔵庫にございます。ちょっとした食べ物も入れてあります。必要でしたら電子レンジをご利用ください。遠慮する必要など全くございません。ご自由になさって結構ですので」
 そう言い残し、沼田は部屋を出て行った。


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