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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館番外編〜始まり〜-9

『………これのおかげかな。』
ふとシャルナから貰ったネックレスを取り出す。 太陽の光に当たって輝く星の飾りがとても綺麗だ。
『幸運か、確かにそうかも♪』
フフフと微笑み、ネックレスをしまおうと思ったその時だった。
ピシッ―――
急にネックレスを繋いでいた鎖にヒビが入り、星の飾りがコトンと下に落ちた。
『な………』
暫く呆然とネックレスを見ていて、急に不安が襲った。
シャルナの身に何か起こったのではないかと。
『御者! 引き返せ! 王宮に戻る!』
窓越しに御者を呼ぶが、反応が無い。
『御者! 聞いているのか! 御者!』
窓から見るが、御者に振り返ることもせず、ただ前を見ていた。
『………くっ! 初めからこのつもりで!』
(ナインツ………何故君が!)
ドアを開けようとするが、鍵がかかっていて開かない。
『馬鹿にするな! この程度………「砕」!』
魔法でドアそのものを粉砕して外に出た。
御者に駆け寄ると、御者は魔法で動くだけの人形であった。
『早く戻らねば………』
馬を馬車から離して飛び乗り、来た道を急いで戻る。
『間に合え! 間に合えってくれ!』
ひたすら、ただひたすら馬を走らせた。
そしてようやく審問所に着いたのは夜になってからだった。
鬼迫るような私の形相に審問官達は自然と道を開け、大した障害もなくシャルナの部屋にたどり着いた。
『シャルナ!』
扉を開き、まず感じたのは悪臭だった………
部屋のあちこちに、血と嘔吐物が巻き散らされ、その中で僅かに悶える体があった。
『シャルナ!』
駆け寄り、彼女を抱き寄せた。
彼女の四肢は無惨にも潰され、服は血でまみれている。
『………紅………様?』
いつも以上にかすれた声だった。
焦点の合わない目が私を見ている。
私は最早冷たくなりかけた彼女の手を取った………握り締めることなど出来ない、砕かれた手を。
『シャルナ………』
『くれ………な………』
ゴボッ―――
声の代わりに彼女の口からは大量の血が吐き出され、私の服を染める。
血を吐き、またぐったりとしてしまったシャルナを、新しいマントでくるんだ。
『待っていてくれ………シャルナ。』
牢を飛び出し、一直線に審問官を捕まえた。
『何をしたぁぁぁ!?』
『ひっ! わ、私は言われるままに………』
『誰に言われて! 何をした!? 言え! シャルナに何をした!?』
『は、ハーベルブランティの侵食を………国王陛下の指示で………』
それだけを聞くと、審問官を投げ捨て私はシャルナの元に戻った。
ハーベルブランティの侵食は、特殊な魔法虫を体内に入れて食い荒らさせる拷問、いや、時には処刑法にもなる凶悪な物だ。
牢に戻り、シャルナに駆け寄りお腹に手を当てる。
『「探」………「破」………「消」………』
静かに集中して呪文を唱える。
体内でうごめく虫を一匹残らず見つけて、魔法で片っ端から除去する。
『………よし、虫は取り除いた………』
だが、破壊された内蔵までは私に治すことは出来ない。 治療魔法は得意ではないのだ。
『くっ………どうすれば………』
『俺に任せろ!』
後ろから声がした。
キシンが牢に駆け込んできたのだ。
『キシン! 今までどこに!?』
『話は後だ! アルクウェル、頼む!』
キシンの後から入ってきた金髪のエルフがシャルナに近付く。 彼女のことは私も知っていた。


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