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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館番外編〜始まり〜-8

審問官の部屋
『ホッホッホ、出来たぞ。』
審問官は新しく作った予定表を掲げた。
『あのエルフめ、悲鳴一つあげんとは可愛いげのない………タップリと時間をかけてやってやるわい!』
表にかかれた予定は一ヶ月先まで書かれている。 普通は二週間もかからずに終わる審問だが。
『………しかし、王兄陛下がこうも積極的に注文してくるとは………』
それも長く苦しめるようにと。
いつもはこの仕事を受けることすら嫌がり、受けても慣例に従い、さっさと終らせるというのに………
『長く苦しめる………裏を返せば長く生き残らせる………か?』
ふむ、としばらく考え込んだ審問官は机の隅に置いてあった豪華な手紙用の紙を一枚取り、手紙を書き始めた………
『兄上! 兄上兄上!!』
王宮に到着するや否や、ナインツが慌てて駆けてきた。
『どうしたんだい? ナインツ、何か事件でも?』
はぁはぁと息を切らせたナインツが回復するのを待つと、ランランと輝く目でナインツが喋り始めた。
『こ、子供が出来ました! 妃に子供が!』
『えぇ〜〜!? やったね♪ ナインツ! 初めての子供だ!』
子供のようにはしゃぐナインツと共に妃のところを訪れて様子を見た後、二人で食卓に座った。
『男の子だと良いね♪』
『もちろん! そうだったら私が武術を教えて、兄上には学問を教えてくださいね。』
私も、もちろん! と返した。 本当に嬉しかった。
やっと世継が出来るのだ。 男の子なら王に、女の子でも、女王になれる。
暫くの間、まだ産まれてもいない子供の教育方針について語り合った後、ナインツはこう言ってきた。
『兄上にお願いがあります。』
『なんだい?』
『ロウズセナ地方に行って、最高のブドウ酒を選んで来てくれませんか?
子供の洗礼用に。』
なんとも気が早い………
まだ産まれても居ないのに。
『そんなの産まれてから行けばいいじゃないか。』
『でも、今年は取り分け良い出来です。 今取りにいって城で保管していたいのですよ。
それに兄上よりも適任な人はいません!』
ナインツは殊更熱心に頼み込んできたため、私も断るわけにはいかないようだ。
『だが、仕事は………』
『それなら指示だけ与えれば良いのでは? 実際、居ても見ているだけなのですから。』
それもそうだ、もう予定表は作ったのだからあとは私が居ても居なくても変わらない作業、それにロウズセナ地方までは往復で四日、あっちでブドウ酒を選んでも五日あれば足りる。
『あぁ、わかったよ。
………善は急げだ! 夕食後、すぐ出発する。』
『………そうですか、えぇ、確かに早い方が良いですね。』
ナインツとの会話はまた子供の話に戻った。
それから数時間すると、私は豪華な寝台馬車に揺られてロウズセナ地方を目指していた。



翌朝、豊かな農村地帯を進む馬車から、外を眺めていた。
『………豊かだなぁ………』
やはり、平和は良い………
退屈なくらいが丁度良いのだ。
しかし、ナインツが念願の子供が出来るとは正直驚いた。 奥手で、緊張して何も話せないことがよくある二人だったのだが。
妃の方も、ナインツより若いためどうもナインツをリードすることも出来ずに受けに徹するタイプらしく、奥手な二人は一緒のベットで寝るので精一杯な可愛らしい二人だった。


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