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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館番外編〜始まり〜-5

『………………王国に反するなら、仕方ない。』
仕方ない、自分の言葉に疑問を持った。
仕方ないとは、自分の意思に関係なくやらなければいけないこと。
私は彼女を助けたいという意思を持っているのだろうか?
『私は………彼女を………』


王宮に帰ってからの夕食は、やはり進まなかった。
『兄上………昨日といい、今日といい、審問の仕事が辛いのでしたら他の者に交代させましょう。』
『一度受けたら最後まで、が規則さ。』
『しかし………』
『法は守らなきゃいけない。
特に、私のような立場ならね。』
そう、法を守らなくてはいけない………
(彼女が法に反するなら…………敵だ。)



ドサッ―――
次の日の審問も、シャルナは断固として改宗をせず、ただ苦痛を与えるのみとなった。
そして牢に戻って来た彼女に今日も面会した。
『気分は?』
『………良く………なりましたわ。
紅様に………御会いできました………もの。』
今日の拷問のせいで、かすれるような小さい声で彼女は答えた。
『私を馬鹿にしてる?』
『あら………本当のこと………ですわ………』
彼女は手を伸ばし、部屋の片隅に丸まっていたマントを取って自分の体にかけた。
『よく没収されなかったな、看守に見つかったら………』
だが、言葉は途中で止まる。
キシンがとりあげるわけないか。
『看守の方………紅様のお友達です………から………』
『どこでそんなことを?』
『看守の方が………話してくれました………わ………』
キシンめ、あとで注意しないと………
『私………紅様に嫌われて………ますの?
看守の方が………言ってましたわ………』
『君が法に背き、改宗しないなら敵だからね。』
言い放つ言葉はまたしても彼女に笑顔で返された。
『では………私が改宗したら………嫌いではないと………言うことですね?』
『………』
あぁ、何故彼女こうも人の言葉の裏を突くのだろうか………
『じゃあ、改宗するのかい?』
『あら………冗談ですわ………ウフフフ………』
二度あることは三度ある。 というより、私と彼女は相性が悪いようだ。

イライラしながら廊下を歩いていると、今日はキシンも来ず、そのまま馬車に帰ることが出来た。
『キシン、どこに行ったんだろう?』
看守の部屋にも居なかった。 どうやら外出したようだが………
『看守がそんな簡単に外出していいのだろうか?』
どうもキシンは昔から仕事に真面目ではない。
それがキシンらしいと言えばそうなのだが………

次の日も、彼女は決して折れなかった。
次第に苛烈になる拷問に平静を保つことは出来なくなったが、まだあの凛とした態度は保たれている。
『気分は?』
『………幸せですわ………』
『………冗談だろう?』
『冗談………ですわ………』
シャルナは今日もマントを体にかけ、私と話している。
『そのマント、気に入ったの?』
『………他に何も………ありませんもの………』
『そう。』
『………冗談ですわ………』
クスクスと笑い、マントを抱き締める。
『………殿方からの贈り物なんて………初めてですもの………』
シャルナはマントに顔を埋めて何かをしている。
『何してる?』
『紅様の………匂いですわ………』
『やめてくれ、なんか恥ずかしい………』
そう言ってもシャルナはまだマントに埋めている。
『私………この匂い………好きですのよ………』
チラリと流し目で私を見る彼女。 ある意味、魔女なのでは?


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