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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館番外編〜始まり〜-19

どれくらい時間が経っただろうか?
ふと目が覚めて、私はベットから起き上がった。
シャルナはまだベットで寝息を立てている。 そっとその頬にキスをして、部屋を出る。
廊下は暗く、フィナ達も寝ているようで静まりかえっていた。
だが、しばらくすると誰かが歩いてくる音がした。
暗い廊下に足音だけがよく聞こえる………
やがて、姿を表したのはヨウヤチネだった。
『ウェザぁ〜〜、お願いがあるのぉ〜〜』
出会ってすぐヨウヤチネはそういった。
『君と寝る以外なら良いよ。』
『むぅ〜〜〜、でもいいんだ。
お願いはねぇ〜〜、ヨウ、静かに眠れるところが欲しいのぉ、六英雄になっちゃてから、皆寝かせてくれないのぉ………』
間伸びした声で話すヨウヤチネだが、確かに英雄になってしまったからには世間がゆっくりと休むことを認めないのだろう。
野山に帰っても、そこはそこで獣達が居るから熟睡も出来ないらしい。
『………あぁ、良いよ。
私の屋敷の地下室なら静かに眠れる。 ただし、ここの者達に手を出さないと約束してくれたらね。』
ヨウヤチネは、ぱぁっと笑顔になり、猛烈に頷いた。
よっぽど寝不足なんだろうなぁ………
『出来れば棺桶も頂戴ぃ〜〜〜♪』
ヨウヤチネはベットより棺桶の方がよく眠れるらしい。 なんでも、あの箱に入っている状態が、守られているようで安心出来るそうだ。
『中はぁ、フカフカのクッションとぉ、暖かい毛布も入れてねぇ〜〜〜♪』
やっと眠れる場所を得たヨウヤチネは、ご機嫌になって部屋に戻っていく。
『紅様………』
シャルナが廊下に出てきた。
『起こしちゃったかな?』
彼女は首を横に振り、そっと私に近付いてきた。
『自然と起きただけ………ですわ………』
二人で微笑み合い、夜風にでもあたろうかと廊下を歩き出す。


ドンドンドン!!
だが、突然玄関のドアが叩かれた。
もう深夜で、ただの来客とは思えない。
シャルナにその場を動かないよう言って、玄関に向かう。
ドアはまだ激しく叩かれていた。
『ウェザ殿! ウェザ殿!』
ドアの向こうからは聞き慣れた声が聴こえてきた。 王宮の使いだ。
『こんな夜更けに何の用だい? 私を捕えに来たのか?』
ドアに近付き、相手に問う。 それと同時に片手では魔力を集めて、いつでも戦える準備をしていた。
『陛下が! ナインツ陛下が自室にてご自害なされました!!』
『な、なんだと!?』
ドアを開けると、使いの者が一人息を切らせて立っていた。
『お、お妃様が御呼びです………至急王宮に御越しください………』
私は急いで馬車の用意をさせた。
『紅様………』
『シャルナ、少し行ってくる。』
心配そうなシャルナに告げて、馬車に乗り込む。
(ナインツ………)

王宮は、皆悲しみに満ちていた。
統一王国の初代が、逝ったのだ。
『陛下………ううぅ………陛下ぁ………』
清められ、ベットに横たわっているナインツに妃がすがって泣く。
何故こんな若くして? 何故子が出来たばかりで?
皆口々に囁いている。
『ナインツ………』
そっと、眠るように横たわっているナインツの頬に触れる。
生前と変わらない格好なのに、頬にはすでに死の冷たさがあった。
『ナインツ………私のせいなのか………?』
ふと、妃が此方を見ていた。
『………貴方に………手紙がありましたの………』
妃が差し出した手紙には、紛れもなくナインツの字でこう書かれていた。


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