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爛熟女子寮
【学園物 官能小説】

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爛熟女子寮(5)-2

 寮を出て駅へ向かう道に沿って古いレンガ造りの塀が続く。理系の公立大学の敷地である。男子学生が多いらしい。私には理系というだけで接点を見いだせないほど苦手な分野である。

「ここの大学、女子が少ないんだって。モテるね、きっと」
私がおどけて言うと、
「見た感じオタクっぽいのが多いわよ」
「そうみたいね」
絵理も関心がなさそうだった。

「おなか空いてるんでしょ?」
「そうでもない」
絵理はフリルのついたミニスカートを穿いている。デザインブラウスはピンクの花柄で初夏の装いである。スカート姿は初めてだ。学校ではいつもジーパンだし、寮ではジャージだから太ももまで露出した脚は新鮮だった。柔肉の素肌が眩しく感じられる。

「その服、可愛いね」
「ほんと?あたし、脚が太いからおかしいでしょ?」
「そんなことないよ。きれいよ」
いわゆる美脚の意味ではなく、触れば吸いつくような質感の美しさのことだが、よけいなことは言えない。
「ほんとよ」
「ありがとう……」
絵理は恥ずかしそうに笑って、
「下條さんにも言われた……」
「……そうなの……」
(そうだ、昨夜、二人は……)
胸に微かな疼痛を覚えて私は黙って歩いた。


 駅前のデパートのレストランでピザとパフェを食べた。おしゃべりは途切れることなく続いたが、弾んだ感じはしない。
 私は自分のせいだと思っていた。心にうつうつとしたものがあって、気持ちが重たかったのである。
 下條さんと2人で過ごしたことについては特に気にならなかったのに、脚がきれいだと褒められてミニスカートを穿いた絵理の心理に嫉妬していた。
(絵理をとられたくない……)
 ブラウスの胸元は大きく開いていて、ブラジャーで寄せた谷間が覗かなくても見える。
(サリーよりも柔らかそう……)
そんなことを考えながら想いは少しずつ膨らんでいく。

 店を出て、パンを買うためにエスカレーターで地下に下りる途中、私は肩を並べていた絵理の手をそっと握った。わずかに腕が触れ合った時、とっさにそうしてしまったのだ。驚いたことにその瞬間、じわっと蜜が滲んだのがわかった。絵理は前を向いたまま握り返してきた。
(よかった……)
ほっとしたことでさらに濡れ、私は地下に下りたところで立ち止まった。
「外へ出ない?」
向けられた絵理の目は心なしか乱れて見えた。
「うん……いいよ」
頬がほんのり紅くなっているのは私の熱が伝わっているからだろうか。……

 どこへ行こうという当てはなかった。とりあえず手をつないだままでいたかった。
雑踏の中を寄り添って、なぜか足は二人とも速く、目的地が決まっているみたいに歩いた。掌が汗ばんでくる。ときおり握り直すと絵理も力をこめてきた。

 駅まで来て、W公園を思い出した。行ったことはないけど、いつも電車から眺めている広い公園である。
(行ってみよう)
日曜日だから人は出ているだろうけど、どこか静かな所があるだろう。とにかく無性に2人きりになりたかった。きっと絵理もそうだと手の温もりから感じていた。寮に戻って部屋に呼ぼうかとも考えたが、玲奈もいるし、誰が来るかわからない。
 絵理に言うと喜んで賛成した。
「あそこいつも見てるよね」
 W公園へ行くには2駅電車に乗ることになる。改札を通る時、やむなく手を離した。そのまま人ごみの流れにのってホームにおりると、絵理のほうから身を寄せてきた。そしてふたたび指が絡まった。
「静かな所、あるといいね」
「うん……探そうね」
私が頷くと意思が通じた笑みが返ってきた。

 公園の入り口から臨める芝生にはたくさんの人がいた。家族連れ、グループ、カップルなど、初夏の日差しの中、ボール遊びをしたり、お弁当を広げたり、明るい声が飛び交っていた。
 私たちが目指したのは芝生のずっと先に見える雑木林だった。人が多いのは主に駐車場に近い入口付近で、奥へ行くほど人はまばらになる。雑木林の境目辺りには遠目には人の姿は見えない。
(林の中なら誰もいないかもしれない……)
 無言で歩いていたのだが、絵理も同じ想いだったようだ。手をつないでいるといはいえ方向も歩速も違わず一緒であった。

 林の中は下草が手入れされていて、一部が遊歩道になっている。見渡したところ誰もいないようだが、道があるのだから誰か通る可能性はある。
(もっと静かな所……)

「こっち行こうか」
絵理が私を引くように道を外れて斜面を登りはじめた。
(絵理も探しているんだ……いい場所を……)
 さほど急ではないが、積った落ち葉が腐葉土になっているので柔らかくて歩きづらい。
 登り切って、さらに竹藪を抜けると木々が途切れて陽光が降り注ぐ一画に出た。その先は青く伸びはじめたススキの原が続いている。視界はほぼ閉ざされている。
(ここがいい)
絵理も、
「ここでいいか」
自分に言うように言って息をついた。
「ハイキングみたいだね」
「ほんと」
見つめ合い、微笑んで、すぐ笑いが消えた。
「座ろうか」
並んで腰を下ろすと体は汗ばんでいた。


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