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バルディス魔淫伝
【ファンタジー 官能小説】

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拾われて飼われました 後編-2

「あとタンポポの綿毛みたいな子たちも、すごくかわいかったですよ」
ツァトゥグァを信仰する無形の落とし子と呼ばれているふわふわと浮遊するものは、セリアー二ャが森の空き地に現れると、すぐに集まってきて周囲を飛び回っていた。
巨木の森では、樹々が枝葉をのばすと、日を遮ったりするために森の中に空き地をつくる。
木漏れ日と涼しげな微風、そして小指の先ほどの白い浮遊する毛玉のようなものが樹の上から、ふわりふわりて落ちてくるのを見て、セリアー二ャはなごんだ。生きる火焔クトゥグアの世界を通過したときの恐怖や緊張が癒された。
「それは私も見たわ。たしかにかわいいものだったわね。泉と森の外まで案内してくれたわ」
さやかとセリアー二ャがツァトゥグァの森の世界でなごんでいる頃、ガーヴィは生きる火焔クトゥグアの世界から逃れ、海底神殿で猫又のキヨマサと呼ばれているケットシー族の神官や人魚、そしてハスターの加護を受けた魔道師と出会っていた。
海に眠る太古の王クトゥルフによって、津波や洪水の厄災が起こり、人魚に変化できる巫女たちと猫又の大神官は海底に神殿を作って厄災が終わるのを待っていたのである。
神殿に逃げ込んだ魔道船には、その世界の女神になるはずだった儀式前の少女がハスターの加護を受けた魔道師によって保護されていた。
それを追って巨大な芋虫のような姿のティンダロスの番犬が神殿に侵入しようとしていた。
ディルバスがクトゥルフの世界の女神を殺害してしまい、魂は別の世界のさやかとして転生してしまったので女神となりえる者を狙ってこちらの世界にも番犬が出現していたのである。
ガーバンクルと呼ばれているその巨大な芋虫は海上の船なども喰いながら、海をさまよっていた。
ガーヴィが現れたのは、ガーバンクルの腹の中でそこは呪われた肉の洞窟のようなところであった。
ガーヴィは火神クトゥグアとの戦いのダメージを受けて、ガーバンクルの腹の中に現れた時は自分の名も思い出せず、また容姿の別の人物のようになっていた。
ただし、左手を触手に変化させることができることを忘却していなかった。
貪欲なるガーバンクルは体内でおぞましい呪いを発動させていた。
海上で海賊船や巡察挺も見境いなしにガーバンクルは喰らい、腹の中で船員を苗床か異形の怪物に変化させていた。
ディルバスの帝国の西域は砂漠化と石化の呪いに襲われ、さらに海浜の近くの街、またいくつもの島は噴火や津波にのまれた。
各地の地震や噴火はガーヴィと火神クトゥグアとの戦いの影響でもあった。
リザードマンの帝国ではない人型の種族の王国をディルバスは攻め、身代わりの侍女を王女だと見抜けず王妃にした。侍女は女神となりえる者ではない。資格なき者が王位を完全に奪った結果、アトラク=ナクアの化身を召喚してしまった。
本物の王女は、ハスターの加護を受けた美貌の少年魔道師のダンジョンで保護されて、ガーバンクルから逃れるための旅を続けていた。
女神なき世界はディルバスの猟犬や異世界での戦いの影響を受けて崩壊しつつあった。
海底に魔道によって巨大な球体の形状をした、内部はダンジョンの神殿があった。
地上の混乱と崩壊からかろうじて避難した修道女と猫又の大神官キヨマサの海底神殿にクトゥルフの厄災であるガーバンクルの脅威が迫っていた。
球体の海底神殿には海へつながる通路があり、船一艘ギリギリの四角い通路があった。
ガーバンクルはその通路に栓のように詰まり、神殿の結界によって挟まってしまった。
そのガーバンクルの体内に亡国の姫君が取り込まれることでアトラク=ナクアが奪った女神となりえる者の複製である、特別なホムンクルスが作り出されるはずだったのである。
ガーヴィがそれを阻止したといえる。
なぜなら、この世界に逃げ込んだガーヴィの魂とニャルラトホテプの手を持つホムンクルスが複製の女神のかわりに作り出されてしまったからだ。
この世界からクトゥルフの怒りを鎮めるための女神を作製する手立てが失われた。
ガーバンクルの体内はぶよぶよとした肉の洞窟というだけではない。地面は歩けば急に底無し沼のように腰まで沈んでしまう。また鍾乳洞のつららのかわりのように触手の蛇のようなものがぶら下がり、這いずっている。
この目もない蛇のような形状のものに咬まれてしまうと、男は奇怪な豚顔のオークに似たホムンクルスに変化してしまう。
女性は意識が朦朧としてしまう。豚顔のオーク型ホムンクルスがその女性たちを孕ませていくのである。
ガーバンクルの体内から口まで出てきたオーク型ホムンクルス三匹は蝙蝠の翼のようなものとひたいから小さなツノを生やした姿にさらに変化すると、飛翔して海底神殿の内部に侵入。修道女を体内にいる時のように襲ったが、人型から人魚型に変化した修道女の尾びれの強烈な威力で撃退された。
王女がオーク型ホムンクルスに孕まされたら、体内からクトゥルフの化身が現れ、アトラク=ナクアの化身と世界の覇権をどちらの神が獲得するか戦うはずなのだった。
しかし、水神クトゥルフと風神ハスターは対立しており、ハスターの加護を受けた魔道師の少年は王女を保護したままガーバンクルの詰まったままの海底神殿から魔道船で、仲間とガーヴィを乗せて離脱する。
猫又のキヨマサは、火神クトゥグアの化身を召喚した。そしてガーバンクルを道ずれに命を落とした。
ガーバンクルが消滅するときの爆発で海底神殿は崩壊したが、獣人の世界に人魚となる術を持つ修道女たちは転送されてガーヴィの姉である王女とハスターの子ジョンによって迎え入れられた。
ハスターの加護を受けた美貌の少年魔道師の魂はジョンに転生していた。また、クトゥルフに狙われていた王女の魂は王女エルシーヌに転生していたのだった。
ガーヴィは少年魔道師と協力して砂漠のリザードマン族の帝都、死せる宮殿でアトラク=ナクアの化身と対峙した。アトラク=ナクアの化身は、ガーヴィたちとの戦いを拒否した。




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