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バルディス魔淫伝
【ファンタジー 官能小説】

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拾われて飼われました 後編-3

「愛しきニャルラトホテプ」
ガーヴィにそう呼びかけるアトラク=ナクアの化身は蜘蛛の姿ではなくすでに人の姿になってクトゥルフの世界に順応して黄金の瞳の種族の姿となっていた。
「なぜかつてのように愛してくれないのですか?」
「俺がニャルラトホテプだと……」
ガーヴィは砂漠でアトラク=ナクアの石化の呪いで共に旅をした仲間を失っていた。
気の合う海賊の青年。女騎士。ガーバンクルの体内から一緒に脱出したディルバス帝国海軍女隊長と女盗賊の少女。魔道船の女操縦者。
ハスターの加護を受けた少年魔道師と王女は石化はまぬがれたが、無名祭祀書の知識をもってしても仲間たたちを襲った石化の呪いを解くことはできなかった。
ガーヴィは仲間の命を奪ったアトラク=ナクアの化身を許さぬと激怒していた。
アトラク=ナクアの化身は消え去る前にガーヴィに、かつての異世界で存在したニャルラトホテプの姿を幻視させた。
ある忍の者の隠れ里にある屋敷。アトラク=ナクアの化身である若く美しい巫女を両腕、腰から下の下半身を触手に変化させて和室で凌辱していた。
忍の者の頭領としてアトラク=ナクアの化身の女忍を従えていた。
アトラク=ナクアの化身の阿国は、織田信長を殺害した。だがその後、火神クトゥグアの力を使った明智光秀とハスターの加護を受けた少年である森蘭丸によってアトラク=ナクアの化身は撃退された。
さまざまな時代と世界でアトラク=ナクアは、万物の王アザトースを覚醒させてしまい全世界が滅亡してしまう危険があろうともニャルラトホテプのそばに現れるために、世界を紡いだ糸でつないでいった。
「俺はガーヴィ、そして神聖エアル王国の第二王子アルフェスだ!」
アトラク=ナクアの化身の美女は目は悲しげだが唇に微笑を浮かべて消え去った。
かつて「あなたの望む全てのものを捧げます。あなたは全て世界の王なのです」と囁いたときは「悪魔よ、去れ!」とニャルラトホテプに祓われたこともある。
神聖エアル王国のある大陸は、バルディス大陸と呼ばれている。妖術師ディルバスがリザードマンの帝国を簒奪し、近隣諸国の領土を侵略して拡大したが、やがて守護女神を完全に失い帝国は滅亡した。
さらにクトゥルフによる地殻変動や洪水により滅亡しかけたが、アトラク=ナクアの化身の撤退により、クトゥルフが眠りについて世界が安定した。
ハスターの守護を受けた魔道師はホムンクルスの研究により、さまざまな獣人を生み出したり、異世界から召喚した。また、魔道師と王女の子孫たちも増えていき、現在のバルディス大陸の世界が形成された。
これらの膨大な過去の歴史を無名祭祀書は記憶しており、ガーヴィに伝えた。
アトラク=ナクアが次元の裂け目で蜘蛛の巣を作るのを止めるのは、ニャルラトホテプのそばで守護女神としてアトラク=ナクアの化身の魂を持つ者が生きているわずかな時間だけである。
さやかは守護女神の魂を持つ者であると同時に、アトラク=ナクアの化身の魂も持つ者であった。
ニャルラトホテプとアトラク=ナクアが離れた世界に存在していれば、精神生命体である神々の下僕どもは
門にして鍵のヨグ=ソトースの検閲を受けずに糸の橋を使い世界を渡れるのである。
滅びを紡ぐ者アトラク=ナクア。
アトラク=ナクアの化身がいる世界は異世界と蜘蛛の巣でつながっている。
這いよる混沌ニャルラトホテプがあらゆる時代や世界に出現し、積極的に干渉していることがアトラク=ナクアの蜘蛛の巣のつながりでわかる。
精神生命体とは、肉体よりも精神が主体となっている生命体である。憑依することでその世界の生き物の姿を変化させることがある。
その世界の生き物の進化に影響を与える巨大スライムのウボ=サスラや燐光を放つ灰色のスライムの形状を持つアブホース、それに喰らったものを体内でホムンクルスに変化するガーバンクルなどを具現化させて出現させるのである。
やがてそこから改造された新たなる種族が繁栄する時代となると世界を渡ってきたさらに神々の姿に近い憑依した神々の下僕どもが召喚されることもある。
ウボ=サスラから進化した種族とアブホースから進化した種族が敵対しあいどちらも滅亡することやアトラク=ナクアの化身によって石化させられてしまうこともある。
寂寥とした生き物が全て石化した世界で「この世界にはニャルラトホテプがもういない」とつぶやいたアトラク=ナクアの化身が消え去る。
生きる火焔クトゥグアによって焼き払われた焦土と化すことも、水神クトゥルフによって大地を洗い流されることもあるが、完全に全滅せず生き残る可能性はかろうじてある。
クトゥルフの大洪水をノアという男が神託を受けて方舟を作り生き残ったという伝承がある。
アトラク=ナクアの化身はその世界全てに障気を蔓延させることができ、生存できるのは神々の下僕ではなく、化身である者しかいない。
ニャルラトホテプは、這いよる混沌、千の貌を持つ神とも伝えられる。その世界に存在する生物に変幻自在に変化して同化して暮らしている。
アトラク=ナクアは、ニャルラトホテプを探し続けている。
「おいらはまた死んでしまったらしいな……」
大あくびをした土神ツァトゥグァは、ゆっくりと目を開いた。
それを見上げているさやかを見つけたツァトゥグァはにいっと大きな口で笑みを作った。
さやかはツァトゥグァからガーヴィとセリアーニャと蛙人コル=スーとして出会った夢の話を聞いた。
「ガーヴィの旦那が探しているお嬢さんは、ここにいたってわけかい。そりゃ、島を探しても見つかるわけはねぇや」
「ツァトゥグァさん、ガーヴィに会いたいの!」
「迷子はうろうろしねぇで、待ってるのも大事さ」
ツァトゥグァは両手をぱんと一度打った。
さやかは音の大きさに驚き尻もちをついた。
鳥が羽ばたくのではなく森のあちこちから白いふわふわしたものが、舞い上がる。
てけり・り! てけり・り! てけり・り!



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