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逃亡
【その他 官能小説】

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逃亡-13

「さあ、ブラジャーを取るんだ。」
 瑞紀の肩がピクッと動いた。怒りと屈辱に震える眼差しで緋村を見たが、すぐにその目を弱々しげに伏せた。
 そして、命令されるままにブラジャーを外していく。
「いま、早瀬警部補の手が純白のブラにかかりました。白魚のような手が背中をすべり、そして今、ホックを外しましたっ!」
 新山はすっかり調子を取り戻して、まくしたてた。例によって、瑞紀自身にも見えるように置いたモニターのチャンネルをFNCに合わせ、緋村はニヤニヤ笑いながら、モニターと瑞紀を見比べている。
(我慢するのよ、原発爆破の大惨事を防ぐためよ…)
 そう自分に言い聞かせて、瑞紀は崩れそうになる気持ちをけなげに奮い立たせる。
 肩紐がハラリとすべり落ちると、あわてて両手で胸を押さえながら、ブラジャーを抜き取った。
「お…、惜しい…、もうちょっとで見えるところだったのに…」
 思わずもらした言葉をマイクが拾うと、新山は慌てて言葉を続けた。
「いや、失礼いたしました…。しかし、あまりにも過酷。清楚で可憐な美女が、駐車場で、テレビカメラがずらりと並ぶ前で、ストリップまがいのことを強制させられているのです。」
 失言を取り繕うとする新山の中継は、むしろ、瑞紀の羞恥心を激しくあおる。瑞紀は唇を噛みしめて、それに耐えた。
 そこへ、容赦ない緋村の言葉が襲ってくる。
「おい、まだパンティが残っているぞ。」
 瑞紀は泣き出しそうになるのを必死でこらえながら、最後の一枚に手をかけた。
「おおっ、とうとう、とうとう最後の一枚に手が掛かりましたっ!」
 新山のボルテージが一段と上がる。
 瑞紀は思い切ってパンティを腰から一気に引き下ろし、足首から抜くと、急いで片手で胸を抱くようにし、もう片方の手を下腹部に当てて隠した。ぐずぐずしているとかえって恥ずかしい部分を晒すことになってしまうと考えたからだ。一瞬、豊かな胸の膨らみと下腹部の黒い茂みをカメラがとらえたものの、瑞紀の思いきりは、効を奏したかに見えた。
「見えたっ!乳房とヘアーが今ちらっと見えましたっ!」
 新山は、もはや完全に興奮してしまっていた。そして、反射的にマイクを通してスタッフに口走っていた。
「今の映像、再生できますか?!」
 それに応えるように、瑞紀がパンティを脱ぐ姿がスローモーションで再生される。白い布地が腰から少しずつおろされていき、目に滲みるような美しい雪肌の下腹部と対照的な漆黒の恥毛が顔を出す。前屈みになっているため、乳房の豊かさがいっそう強調されている。
 FNCの放送は、この時、とうとう一線を越えてしまった。
(イヤっ!どうして、そんなところを何度も映すの!)
 瑞紀は叫び出しそうになるのを、やっとの思いで抑えた。取り乱してはならないという警察官としての意地が、なんとか踏みとどまらせているのだ。
 大事な部分は手で隠しているとはいえ、テレビカメラが集まる中、全裸で立っているのは、死にたいくらいに恥ずかしかった。
 ちょうど風が出てきて、初秋のさわやかな風が瑞紀の剥きだしになった肌を撫でていく。そうすると、屋外で全裸になっていることを、いっそう強く意識してしまう。
「ほうら、これで素っ裸だ。どんな気分かな?」
 緋村が瑞紀をいたぶるように言う。
 カメラは、隠すことができずに丸出しになった白桃のようなヒップをなめるように映していく。
 ふいに緋村が瑞紀の手からパンティを奪い取り、手にとって調べ始めた。今まで穿いていたパンティを男に隅々までチェックされる恥辱に耐える瑞紀に、追い打ちをかけるように緋村が声をあげた。
「おい、この濡れてるのはなんだ。」
 緋村はセミビキニの股間を、興味深げにのぞきこむ。
「い、いやぁ、見ないでっ!」
 瑞紀が狼狽して声をあげた。しかし、全裸の身体をかばっているため、パンティを取り返すこともできない。
「すごいな。オシッコをもらしたみたいにぐっしょりだ。」
 緋村はカメラの前にパンティの股間の部分を突き出した。アップになったその部分は楕円形に湿って色が変わっている。車の中でさんざん身体をいじられた当然の結果だった。
「あそこの形が濡れてくっきりとパンティに浮かびあがっているじゃないか。警視庁きっての才媛が、こんなに淫乱だったとはねえ。」
 さすがの新山も黙ってそのやりとりを聞いていたため、二人の会話はそのまま全国に放送されている。
「まだ何か隠しているかもしれないな。」
「もう、ありません!」
 瑞紀が緋村を睨みつける。しかし、緋村はニヤニヤ笑って言葉を続けた。
「さしずめ、胸と股を隠しているのが怪しい。両手を頭の後ろで組んでもらおうか。」
「えっ!」
 瑞紀は緋村の意図に気づいた。全裸にしただけでは飽きたらないのだ。
 身体を隠している両手がブルブル震える。これを離したら、乳房も下腹部の茂みも全てをカメラの前でさらけ出すことになるのだ。
「警察官は辛いねぇ。」
 そう言いながら、緋村は無線機を手で弄び、瑞紀にプレッシャーをかけてくる。
 とうとう瑞紀は、胸を抱いていた手を離した。


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