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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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すれ違ってばかりの俺達-1

「はあ…………」


焼けるような砂の熱が、レジャーシート越しに伝わってくる。


生臭いような潮の匂い。白く泡立つさざ波。焼けつくような日射し。あちこちで聞こえる、海にはしゃぐ人の声。


そんな開放的な空間にいると言うのに俺は、口からエクトプラズムが出そうなくらいの、負のオーラに包まれていた。


虚ろな瞳で追ってしまうのは、やっぱり沙織の姿。


こうして遠巻きに眺めるのは全然平気なんだけどな。


足が細く長く、思った以上に胸が大きい沙織は、スタイルも抜群で、見惚れてしまう。


水着の女の子なんて、そこかしこにいるし、何より普段からエロDVDを観まくってる俺にとって、ビキニなんて他愛もない、そのつもりだったのに。


沙織がそばに来ただけでヤバくなるなんて。


胡座をかいた俺は、今は平常モードの自分の下半身を見て、ため息を一つ。


こんな調子で、果たして沙織と結ばれるのだろうか。


「あー、情けねえ」


そう一人ごちた俺は、ヘタレ過ぎる自分にまたため息を吐いた。





間近で見た沙織のビキニ姿に、身体が勝手に反応してしまった俺は、バレたくない一心で、結果的に沙織に冷たい態度をとってしまった。


普段の俺なら、沙織に決して荒げた声なんて出すことなんてなかったのに、あまりに焦り過ぎてしまって。


だけど、そんな男の事情を知らない沙織は、初めて見た俺の態度にショックを受けたらしく、結果、沙織は俺に対して近づいて来なくなってしまった。


もちろん謝ろうとしたけど、ここぞとばかり州作さんが沙織と一緒にいようとするから、きっかけすら掴めなくて。


しかも、なまじ腹が痛いことにしてしまった俺は、不本意ながらもこうしてみんなの荷物番をやる羽目になってしまったのだ。


完全にやることがない俺は、砂を握り締めてはサラサラこぼす、それを繰り返すだけ。


遠巻きに、波打ち際を歩いている沙織を眺めると、時おり波の勢いにバランスを崩しそうになったりしているのが目に入る。


そして、それを州作さんが、すかさず支えてあげては沙織が驚いて顔を赤くしている始末。


肩を触れられて、彼女が思わず距離を取ろうとするのは、もちろん俺がいるからってわかるんだけど、こうして客観的に見れば、初々しいカップルのようにも見えて、気もそぞろになる。




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