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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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彼女が水着に着替えたら-8

俺の態度がひどいことは百も承知だ。


だけどこんな状況で、冷静に応対できるだろうか?


仕方ねえだろ、と自分を正当化するしかできないに決まってるじゃないか。


だから、踞って必死で腹が痛い振りをしている俺は、沙織の瞳が密かにうるうる潤んでいたことに気付かなかったが。




「ご、ごめんね、倫平……。じゃあ、先に行ってるから……」


え、沙織の声、震えてる!?


語尾がほとんど消えかけていた彼女の声で、ようやく俺は沙織に対して傷つけてしまったことに気付いた。


違うんだ、これは不可抗力で……!


そう言おうとした所で、すでに後の祭り。


沙織は逃げるように俺に背を向け、小走りで離れていった。


遠ざかる彼女の後ろ姿に、罪悪感がチクリと胸を刺す。


……早く謝んねえと!


沙織を傷つけた焦りは募る一方だ。


皮肉にも、そんな焦りが身体の火照りを冷まさせてくれた。


みるみるうちに平常モードに戻る俺の下半身。


よし、これで沙織に謝りに行ける!


沙織とケンカ一つしたことがない俺にとって、これは一大事なのだ。


一刻も早く謝って、沙織の笑顔を確認するまでは、何もかもが手につかなくなる。


急いで立ち上がった俺は、沙織のあとを追いかけて駆け出した……が。


程なくしてその勢いもあっという間に失われてしまう。




――視線の先には、満面の笑みで沙織に駆け寄る州作さんの姿があった。




遅れてきた沙織を迎えに来たのだろうか、手際よく沙織の荷物を持ってあげている州作さん。


沙織は余裕がなかったのか、遠慮するわけでもなくただ俯いて州作さんの少し後ろをとぼとぼ歩いているのが目に入る。


州作さんは気付いてるのかいないのか、あいもかわらずニコニコ話しかけている。


そんな光景を呆然と見つめていた俺には、ただただ謝ることができなかった後悔と、妙な胸騒ぎだけが残っていた。






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