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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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僕だって!-12

「ありがとう」
「えっ?何が?」

地元で縁日があり、私と絆は特に浴衣を身に纏う訳でも無く、暗闇に綺麗に浮かぶライト
が照らされ、大勢の人で賑わう祭りに足を運んでいた。

「私の為にここまでするのはアンタしかいないじゃない」
「でも、僕30万円のも依頼料何か持ってないし」

嘘が下手か、悪魔で自分じゃないとシラをきるが。

「絆を探すために美術室を覗いたの、そしたら見たのよ、大きく飾ってあったあの素敵な
青空の絵が無い事に。」
「あれはちょっと、別の場所に移したの」
「何の為に?あれだけ気にいって飾っておいて。」

反論する言葉を無くした、観念したか。

「どうしてよっ!あれは貴方にとって大事な絵なんでしょ!?何時間いや何日も掛けて
時には理想とする色が出ないとかでスランプ気味には陥って、それでもようやく書き上げ
て、我が子のようにジーと見つめていたじゃん」
「別に、可愛い子には旅をさせろって言うじゃん、だから…」
「絆…」

素直で無い彼、でもそんな彼が愛おしく感じ。
 私は腕を引っ張り、人気の無い所へ連れ込み、彼を抱き締めた。

「ありがとう、本当に、私の為…嬉しい。」
「杏…」

悩みを解消出来たのは勿論、何より彼のそんな気持ちが嬉しい。
 彼に出会えて本当に良かった。

「良かった、本当に…、これでまた僕の大好きな笑顔に出会えるんだね」

彼も私を抱き締めた、暖かい両腕で、包み込むように。


あの後、絆も井吹さんにお礼の電話を力一杯したらしく、依頼をしに事務所へ向かった時
彼の私を想う強い眼差しに心打たれたとか…。

「いやーこれまた混んでるねぇー、おっ、ジャンボ焼き鳥の良い匂い♪」
「…ちょっと僕買ってくるわ、何味が良い?しおにタレに」
「じゃー私はヨダレで。ていうか一緒に行こうよ」
「ヨダレって、ヤダよそんなの君以外のなんて。いーよ結構並んでるし色々見て周りたい
でしょ?先行ってて」
「あっ!」

そう言い残し、放れて行った。
 私のヨダレは良いのかい変態だな。何かそれ以外に理由があるような。

この時、彼は自負していた。幾ら自分が大事にしていた絵を売却して探偵に依頼し
 ストーカーから私を救ってくれたとはいえ、自分自身が直接私を救い護った訳では無い
事を…。

「絆…」

そんな良いのに、形はどうであれ、私は、君の事を。

などと浸り、縁日会場を歩いていると、突然。

「キャッ!?」

乱暴に肩をぶつけられ、目に入った黒づくめの体格の小さい男が謝りもせず走りさって行く。不快に思いつつ気を取り直すと、肌に離さず持っていたバックが無い事に気づき。
これって…

「引ったくりー!誰かぁーーっ!」

私の叫びに、周りの人が振り向く、が戸惑い誰一人追ってくれる者は居なく。

「!!」

その叫び声は、屋台で並んでいた彼にも耳に届き、あと僅かで買えるという所にも
関わらず、無我夢中って走っていった。

「待ちなさぁーーいっ!」

こうなりゃ自分で追っかける。しかし向こうのほうが早く追いつけない。
 息を切らし、男がどんどん小さくなっていき、もう駄目だと思ったその時。

向こうで身に覚えのある巨体の男性を見掛け、私は無我夢中に叫んだ。

「オジサァーーンッ!!そいつを捕まえてぇー」
「おうっ!?」

法被にスキンヘッドに捩れ鉢巻をした菫のお父さん、町内会の集まりで毎回顔を出していて、何かの行事で待機していた。

一瞬何の事だかさっぱりだったが、走り去る男が不自然に自分の娘が持っているような
 バックを見て、事の事態を理解し、そしてゆっくりと男の元へ歩みより。

「か弱い女の子の所有物を取り上げるとは、貴様それでも男かぁーーーっ!!」
「ひっ、ひぃぃぃぃぃっ!」

胸倉ではなく、頭上を掴んだ、というより摘んで、そのまま地面へ顔面へと叩き潰し
引ったくり犯の30代の男を撃破した。

「オジサン」
「おぉーーう杏ちゅわぁーん、怪我は無いかい?」
「えぇ、ありがとう取り返してくれて。」
「ぬあぁーーにっ!娘が何時もお世話になってんだ、このくらい」

ぶっきらぼうな笑顔で、バックを手渡す。
 それから同じ法被に身を纏った中年男性が3、4人来て、オジサンを迎えに来て
 神社の方へと去っていった。

「杏ぁーー!」
「絆ぁ!?」

彼の叫び声を耳にし、振り向くと、手ぶらで息を切らし険しい顔をする彼の姿が。

「バックは?」
「菫の、オジサンが、たまたま居合わせて」

私のバックを目にし、安堵の表情を浮かべる、それは兎も角

「アンタ何してんのよ!」
「ゴメン、また買いに」
「そうじゃなくてっ!何走ってるのよ、無理は駄目だって、先生が」

こういう事をされると本当に危なっかしい、それなのに

「護りたいんだっ!」
「えっ!」

「僕だって、君を救いたい、男として、ずっと大好きな君の笑顔を護りたいんだっ!
 間接じじゃなくて直接…」

そう言い放つ彼の瞳はとても真剣、だから私は呆れさと嬉しさと愛おしさを込め
 こう言う…。

「バカッ!♪……」


次回、12話へ続く。


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