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真里菜の憂鬱
【兄妹相姦 官能小説】

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真里菜の憂鬱-3

(3)


 兄の『勃起』という生理現象が彼女にもたらした心の変化はその時それほど強いものではなかった。
(男子と女子の違い……)
まだその程度の受け止め方であった。彼女も胸や性器を隠すこともしなかったし、恥じらいも感じなかった。ただ、そこには『兄』だから、『亮輔』だから、という、彼を慕う感情が前提となっていたのはたしかなことだった。

 その夜の兄の様子はいつもとちがっていた。
(肩を抱いてくれない……)
それだけでなく、二人の間に隙間を作るように身じろぎした。
「お兄ちゃん」
「ん?」
目は天井を見つめている。
(何か、考えてる……)
勃起したのを見られたからだろうか。
(そんなこと、どうでもいい)
いつもみたいに抱いてほしい。

 真里菜は亮輔の腕に縋った。
「抱っこして」
わざと甘えて言うと兄の視線が横目で注がれ、無言のまま抱き寄せられた。
「こうすると安心」
すると腕に力がこもり、もう一方の腕も掻き抱くように体に絡んだ。
「うっ……」
これまでにない激しさを感じた。
(お兄ちゃん……)
寄せた顔が髪をくぐっていくみたいに押しつけられ、項に埋もれた。熱い息が吹きかかってきた。
(どうしたの?)
「真里菜」
「なに?」
「ぼくもこうしてるとほっとする」
「ほんと?」
「うん」
引きつける手が背中や腰の辺りをまさぐるように動いた。まるで真里菜の体を確かめるように……。

 真里菜は身を任せていた。いつも受け止めてくれていた兄が、
(今夜は私に抱きついている……)
嬉しいような、ちょっと怖いような不思議な感情に見舞われた。
 加わる圧力は苦しいくらいだけど、奥に潜んでいた何かが少しずつ膨らんでいく感覚が起こった。頭の中がぼうっとしてきて体が浮かぶような心地よさが生まれた。

「お兄ちゃん」
締め付けられていた腕を引き抜こうともがいた。
「ごめん。痛かった?」
「ううん。痛くない」
彼女も兄の体を抱きしめたくなったのだった。
 横向きに向き合い、両腕を差し合ってがっしり体を合わせた。自然と唇が触れた。
(キス……)
ほんの一瞬であった。兄の方から顔をそむけ、それはキスというより吐息の交差のような印象だった。

 頬をくっつけ合った。唇はすぐに触れる位置にある。
(キスしてほしい……)
思ったが、兄の顔は無理に頬を当てているように動かない。彼女も自分から寄せることはできなかった。

 自分の鼓動が聴こえる。夜が時を刻んでいく。
(亮輔……)
しっとりと睡魔に引き込まれ始めたのはどれほど経ってからだろう。
 心なのか、実際に体が感じたものなのか、深いところに熱っぽさを覚えながらも真里菜は眠りに落ちていった。


 兄と一緒に目覚める朝が好きだった。それは日曜日か、もしくは祝日。両親は夜勤を休日前に限定していた。学校に支障のないようにとの配慮からであった。

 早起きしなくていい。兄の匂いと体温のこもったベッドで二人で話をするのが好きだった。汗でちょっと湿った布団が妙に心地いいのだ。
「お兄ちゃん、いま何時?」
「八時半」
「まだいいね」
「うん」
夜勤明けの両親は九時半すぎに帰宅する。
「もうちょっといいね」
「うん」
それが挨拶のように抱き合う。
 淋しさを紛らすために寄り添った二人の想いの在り方が二年の間に悦びを満たすものに変わっていた。その悦びがどうして生まれてくるのか、予感のような曖昧な感情がゆっくりとどこかへ向っている自覚はあったが、まだ未成熟な彼女の体はその蠢動を密かに感じ取っているだけだった。はっきりしていたのは、
(兄が好き……亮輔が好き……)
そのことだった。

 
 二人の行為は仲睦まじい寄り添う兄妹ではなくなっていた。異性として互いを求め合う意識の交錯の中に足を踏み入れていた。だが、真里菜の想いのどこかに必ず『兄』がいて、『兄妹』であることを忘れることはできなかった。それは強く考えてのことではなかったが、無意識にも抑制が働いていた結果になっていたのかもしれない。
(亮輔はどうだったのだろう?)
おそらく彼女と同じ想いだったのだと思う。
(真里菜は妹なのだ……)
その意識はあったにちがいない。だから力をこめて抱き合っていながらも衝動的な行動には至らなかったのだろう。

 しかしながら性的高まりは少しずつではあるが、日に日に大きく膨らんでいく。それは体の成長の証しだから止めようがないことだった。体に触れ合っていたことが性への関心を助長していた一面もあったかもしれない。

 六年生になって一段と肉付きが増したと真里菜は自分でも思った。身長も伸び、体重が増えるとともに胸の膨らみも横向きで鏡を見ると明らかに大きくなっている。
 友達の間で男女の違いや、関わりの情報も多くなり、セックスの知識がかなり正確に把握できるようになっていた。
 亮輔は中学二年。だからセックスのことは、
(当然、知っているだろう……)
自分たち兄妹の『秘密の繋がり』は少しずつ混沌とした心理の変化をみせながらも続いていた。 
 


  
 
 


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