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キラキラ狼は偏食の吸血鬼に喰らわれたい
【ファンタジー 官能小説】

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血のように紅く 闇のように黒く 雪のように白い-1


 ―― 小一時間ほど、時間を遡る。

 街の正門付近に着いたディキシスは、レムナに討伐隊の動きを上空から探らせていた。
 討伐隊は広場でのチェックの後、近くにある国営の宿営地に戻っていたが、ドミニクを含めた数騎が、不自然に姿を眩ましていたからだ。

 レムナの衣服に輝く鉱石ビーズには、衝撃を吸収する魔法がかけられており、鋼鉄の鎧を着るよりも効果的に、彼女の身を守る。
 しかし、まばゆい虹色の輝きは、いかんせん目立ちすぎるのが大きな欠点だった。
 数個のビーズを決まった手順で押すと、一時的に輝きを消せる仕掛けになっているが、その間は魔法の効果も失われてしまう。
 また鉱石が輝きはじめる数十分の間は、ただの薄布服も同然になるのだ。

 鮮やかな翼を広げたレムナは、なるべく音をたてずに飛び、すぐにドミニクたちが街から離れた林へ、密かに駆けて行くのを発見した。
 目立たないようにレムナは低空飛行をし、ディキシスは徒歩で、不審な動きのドミニクたちを追いはじめた。
 今のディキシスは、九尾猫以上の俊足で音もたてずに走れ、吸血鬼よりも静かに気配を消せる。
 たちまちドミニクたちに追いつき、彼らが討伐隊を名のりながら、密かに吸血鬼と手を組んでいることを知った。

 どうりで討伐隊が、表向きに成果をあげられないわけだ。
 吸血鬼を捕まえるどころか、協力してせっせと逃がしていたのだから。

 もっとも、それを知っているのは、ドミニクを中心にした一部の腹心だけで、隊員の過半数分は、ぬるい調査で基本給金だけを貰って、満足している連中のようだった。
 こういった、本当にいい加減なメンバーがいることで、役人の目も誤魔化せていたのだろう。

 しかし、ディキシスを戦慄させたのは、ドミニクたちの会話から、ラクシュがやはり本物のキルラクルシュだと知ったことだ。
 さらに吸血鬼たちは、彼女を従わせる手札にと、ドミニクへクロッカスを拉致するようにも指示していた。

 林の中で、少し離れた茂みに隠れ、ディキシスはクロッカスが詰め込まれているらしい袋を眺めたが、助けるわけには行かなかった。
『鈴猫屋』には、世話になっている。
 クロッカスは掴み所のない男だが、商売に誇りをもっており、そういう姿勢がディキシスは好きだった。
 だが、彼はラクシュの正体を知っていたのだろうか……?
 少なくとも、吸血鬼というのは知っていたはずだ。
 だから、レムナが心配そうに袋を眺めているのに気づいても、ディキシスは助けようとは言わなかった。
 ここで不用意に飛び出せば、全ては水の泡だ。

 なぜ、キルラクルシュが白髪となり、故郷と同族から離れて遠い地でひっそりと暮らしているのか。
 本当に血肉を食せないらしい彼女が、どうして吸血鬼なのか。

 ―― それらの疑問は、すぐに解き明かされた。

 ディキシスは、野原をひそやかに進む吸血鬼たちを見つけて追い、彼らがラクシュとアーウェンを取り囲んで交わした言葉を、魔道具のイヤリングで遠くの木陰から聞いた。
 魔物の血しか飲めない、奇妙な吸血鬼……それがキルラクルシュの正体だと、ディキシスは初めて知った。
 隣では、同じイヤリングを付けたレムナも、驚愕の事実を知って青ざめている。

 無理もない。
 レムナは最初こそラクシュに腹をたてたらしいが、今では彼女をすっかり気に入っていた。
 鈴猫屋のショーケースで、飛び抜けて優美で繊細な細工の魔道具を見て、それを作ったのがラクシュと知った時にも、改めて見直したらしい。
 ついさっき、星祭りでアーウェンとも親しくなったばかりだ。


 ―― だが、ディキシスは指針を改めるつもりは無かった。

 ラクシュは間違いなく、キルラクルシュで、アーウェンも彼女の正体を知っていた。それならば、二人は自分の敵だ。

 たとえ、キルラクルシュが仲間に利用されたも同然だとしても。
 そのあげくに捨てられ、また再利用されようとしている、哀れな存在だとしても。
 彼女が何万もの人間を殺し、生贄制度を作らせるほどの恐怖を植え付けた事実に、なんの変わりもない。



 理由があれば許されるのか?
 それなら、この世に罪など存在しない。

 ディキシスの復讐が、決して正義にならないのと同じで、キルラクルシュのやったことも、許されなどしない。




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