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ありがちな二人の、ありがちな日々
【女性向け 官能小説】

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割れたグラス-2


新太がマンションで生活を始めてから、いつも湊が使っていた江戸切り子の赤いグラス。
それは、夫と旅先で揃いで買った大切な思い出の品だった。

白いシステムキッチンの食器棚の中には、夫の青い切り子のグラスが大事にしまわれていて、

「家の中のものは自由に使って。だけどのグラスだけは、ごめん使絶対にわないでね…」

それが新太が暮らし始めてから湊に言われた、ただひとつの条件だった。
よほど大事なものなのだろう。新太は湊に言われた約束を守り、青いグラスには触れなかった。

しかし、日が経つにつれ、互いの過去を少しずつ交わし知る事により、新太の中で湊は少しまた少しと大切に感じる存在へと変わり、湊が亡き夫を大切に思う気持ちを感じると、嫉妬が膨らんで募っていった。

「湊サンが一番大事なのは、戻らない過去なんだ」

堪えられなくなった嫉妬が言葉として溢れて、新太は湊に苦悶の顔をみせた。

「今ここにいる僕は…、きっと湊サンにとっては暇潰しの材料のひとつでしかないんだろうね」

苛立ち混じりにそう言い放ち、溜め息を落とすと、

「…キミは…、どうなの?」

湊は、泣きそうな顔で新太にそう尋ね返した。

「…暇潰しなんかじゃないよ」

「私だって、暇潰しだなんて思ってないよ」

「だったらちゃんと僕を見てよ…」

新太は湊を抱き締めて、弱々しく呟いた。

「新太…」

「…あの青いグラスと、湊サンの赤いグラス…、棄てて欲しい」

そんな思いを湊に打ち明けると、

「…ごめん。まだ、そんな勇気ないよ…」

震える声で湊は、それは出来ない事を告げた。
そんな湊の唇を新太は自らの唇でふさぎ、抑えきれない自分の気持ちを湊の体に理解して貰おう、薄藍のキャミソールのワンピースの上に羽織られた白いサマーニットのカーディガンを脱がせて、ソファーに押し倒すように寝かせた。

「嫌なら叱って拒んでよ…」

鎖骨に唇を這わせながら、ワンピースの肩紐を肩から外して、露になった白くて小ぶりな胸を両手に包み、硬くなった先端を口に含み、

「…っ…ぁ…」

舌で湊に甘い愉悦を与えた。
胸を吸い舐めながら、潤んだ下肢の秘所に手を忍ばせ、下着の中に手を入れ、滑りの溢れる膣内を指腹で引っ掻くように、湊の敏感なスポットを責めた。

「ぁあ……っ、新太っ…ぁ、激し…」

「湊サンが悪いんだよ」

まるで、好きな子にわざと意地悪をする子供のように、新太は少し乱暴に湊の体を、喘ぐ声を求めた。
愉悦に乱れた湊を後ろ向けにしてソファーに抱かせ、ワンピースのスカートを捲り、蕩けそうに濡れ潤んだ秘部に、熱く張り詰めた欲の棒をあてがい、

「ぁああっ!」

「――っっ!」

湊を後ろから抱き締めながら、滑り蠢く熱い膣内を深く突き立てた。

「っ…、湊サン…」

「あっ! あぁ…っ…」

ソファーにしがみつき、背中から突き立てられる激しい快楽の揺れに甘い喘ぎをあげる湊の両胸をもみし抱きながら、

「僕だけの湊サンがいい…。もう、置き去りの寂しさはいやだ…」

粗くなる息に我儘な気持ちが溶け混ざる新太に、

「私だって…、置き去りはいやよ!」

湊は、快楽で繋がった体が離れないようにゆっくりと新太が見える体制へと変えて、

「もう…、大切な人が居なくなる…、そんな怖い思いは…やだよ…」

新太をソファーに座らせ、座位で新太にしがみつき、泣きながら新太の唇を求めた。

「僕は、居なくならない。湊サンが嫌がったってずっと一緒に、傍にいる」

「あああっ! 新…太ぁ…」

「――っ! 湊…サ…」

新太の言葉に悦に反応するように、湊の中が激しく滑りきつく狭まり、離したくないとばかりに新太の欲を締め付ける。
気狂いを起こしそうな快楽に嬌声をあげあい、互いの粗く熱い息や体温を貪るように交わり、やがてはきつく抱き締めあって、悦楽に登り詰めた。

火照りを冷ますように微睡んだ後に、湊はゆっくりと立ち上がると、ダイニングへと歩き食器棚から二対のグラスを取りだし、両手を高い位置にあげて、グラスをシンクに落とした。

割れて混ざった赤と青の破片を見つめて、

「過去だけに縛られない。本当はそんな私になりたい…。そう願ってた…」


気持ちを吐露して、小さく笑んだ。


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