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キラキラ狼は偏食の吸血鬼に喰らわれたい
【ファンタジー 官能小説】

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一枚足りない!-2

 新聞配達のハーピー青年が言うには、首都は半月前から大騒ぎで、特別号外まで出たそうだ。
 世界中に名を轟かせた女吸血鬼の死に加え、一国の滅亡までとあっては当然だ。
 地方には噂も遅く、新聞も通常版しか届かないのを、アーウェンは心から感謝した。

 人間の王国が滅ぼうと、恩知らずな吸血鬼たちが討伐されようと、アーウェンにとっては知るかという気分だ。しかしラクシュに知らせるのは、少しでも先延ばしにしたかった。

「今日……コニーは?」

 何気ない調子でラクシュが放った質問に、後ろめたさ満載のアーウェンはビクッと身体を震わせた。
 遠くから新聞を運んでくるハーピー青年は、いつもこの家でお茶飲んで一休みして、新聞記事を賑やかに喋りまくって行くのに、今日にかぎっていないのが不思議なのだろう。

「あ、ハハ……今日は忙しいから、休憩しなくても大丈夫って、すぐに飛んでいっちゃったんです!」

 アーウェンは今朝で二つ目の大嘘をつく。
 キルラクルシュ事件を話したくてウズウズしていたハーピー青年には、竹筒の水筒に入れた茶を強引に渡して、さっさと飛び立ってもらった。

「ん……」

 ラクシュが新聞を傍らに置き、茹でたニンジンをフォークで突き刺す。

「新聞……心配ないよ……鈴猫屋で、見せて、もらう」


 ―― きた、正念場。


「……ハハ……そーですねー。今日は街に行く日で、ほんとーに、良かったですね―」

 食卓の向かいに腰掛けたアーウェンは、ぎこちない棒読みで答える。

 ラクシュは今日、とても久しぶりに鈴猫屋へ行く予定になっていた。
 前から特注で頼まれていた魔道具も仕上がったし、他にも多数の作品ができたと言っていた。
 血飢えが解消されて、魔道具造りのスピードも格段に速まったそうだ。

 ここ数日は快晴かドシャブリ豪雨という妙な天気続きで、ラクシュはなかなか昼間の街へ、大荷物を抱えて行けなかったのだが、今日はほどよい薄曇りになるという。

「ラクシュさん……鈴猫屋に品物を届けるなら、俺が一人で行ってきましょうか?」

 ダメだろうなと思いつつ、アーウェンは打診してみた。しかし思ったとおり、ラクシュは白い髪をパサパサと横に揺らす。

「私、自分で、行く」

 確かにアーウェンがお使いに行き、言伝でやり取りするよりも、ラクシュが店に行ったほうがよほど正確で早い。
 だが本当の理由はきっと、この間クロッカスから『元気になったなら店にも顔を見せてくれ』と言われたのを、律儀に覚えているからだろう。
 ラクシュはこういう部分が、本当に生真面目だ。
 けっして多くの相手に関わろうとはしないけれど、その少ない相手を、とてもとても大事にする。

「そうですか……」

 アーウェンは引きつった笑みを顔にはり付けて、内心でガックリとうな垂れた。

 ―― だがしかし! 俺は全力で、情報遮断に励ませてもらいます!!

「……アーウェン?」

 青ざめたまま朝食を猛スピードで口に押し込むアーウェンを見て、ラクシュが小首をかしげた。
 大急ぎで食事を終えると、アーウェンは大きな音を立てて椅子から立ち上がり、空の食器を流しに放り込んで宣言した。

「ラクシュさん! 今日は俺、市場に大事な用があるんです! だから街には、先に行かせてもらいます!」

 以前、ラクシュが鈴猫屋に毎回行っていた時は、アーウェンも必ず一緒に家を出た。
 町ではラクシュが特注品の打ち合わせをしている間に、アーウェンは市場を回るなど別行動もするが、行き帰りの道は必ず一緒だった。
 だだっ広い野原を二人で歩く時はいつも、ラクシュと出会ってからここに着くまでの旅路を思い出す。
 苦労も多い旅だったけれど、アーウェンにとって何にも替え難い、大切な思い出だ。

「ん?」

 ラクシュは必死の形相のアーウェンを見上げ、胡乱な目を少し見開いたが、すぐにコクンと頷いた。

「……そっか。台車は……私が、持ってく……魔道具、軽いけど、たくさん」

「はい。それじゃ、水瓶女神の噴水前で待ってますから!」

 アーウェンは洗面所に飛び込んで、手早く身支度を整えると、上着を引っつかんで飛び出す。

「行ってきます!」

「ん……」

 後ろから聞えた抑揚のない声が、少しだけ寂しそうな色を帯びていた事に、焦りまくっていた今日のアーウェンは気づかなかった。



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