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鳳仙花
【その他 官能小説】

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鳳仙花-8

(9)


 葉月がぼくに話があるという。
(いったいなんだろう?……)
想像を拡げてみても、少なくとも『いい話』は思いつかない。
(ぼくを責めるのだろうか……)
いまさら、という気もあるが、責められても一言も返す言葉はない。
(やはり泊まるのではなかった……)
後悔の一方で、少女を傷つけた罪を消し去る方法などないことはわかっていた。
 ところが、翌夜、葉月は思いもかけない方向からぼくを『責めた』。


「一度も年賀状くれなかったね」
部屋に入ってくるなり、葉月は用意していたように言った。
「待ってたのに」
(年賀状……)
「暑中見舞いだって……。ホウセンカのことだって訊いたのに、返事くれなかったわ」
(ホウセンカ……思い出した……)
何度か書いてあった。昨夜のように、
『今年もホウセンカは咲いていますか?』
気にも留めず、なにより返事を出せる気持ちにはなれなかった。

「ホウセンカ、好きなの?」
「うん。好きっていうか、なんか、情熱的な感じがする」
「……」
ぼくが黙っていたのはその言葉がぴんとこなかったこともあるが、彼女の胸元に心が揺れたからであった。
(乳首……)
タオル地のシャツから乳房が盛り上がっていた。あの頃より一回りは大きくなっている。

「ホウセンカの花言葉って知ってる?」
「花言葉?……知らないな……」
ホウセンカに限らず、花言葉など興味をもったことがない。
「知りたい?」
ぼくの目を捉えて言うので、仕方なく、
「何なの?」
葉月はふっと目を伏せ、声を落とした。
「私に触れないで……」
「……」
ぼくは胸を衝かれた想いで葉月を見つめた。
 
「聞いたことある?」
「いや……」
『触れた』ことを言っている。『アノコト』を……。
 ぼくは項垂れたまま黙っていた。

「何だか深い言葉だと思わない?」
何を言いたいのだろうと考えても捉えどころがない。
(やっぱり、責めてきた……)
 沈黙が流れて、葉月が小首をかしげてぼくの顔を覗き込んだ。
「なんで黙ってるの?」
「うん?……深い言葉っていうから、どういう意味かなって思って」
「そう……何も感じない?」
「……」
ぼくは耐えられなくなった。

「謝っても許されないけど、あんなことして、悪かったと思ってる……ごめん……」
俯いているので彼女の表情は窺えない。小さな吐息が聴こえた。
「豊さん……気にしてたんだ……」
「後から、申し訳ないと、ずっと思ってたんだ」
顔を上げると葉月はやさしい表情をしていた。

「怒ってないのよ、あたし」
「怒ってない?」
「あの時、びっくりしたけど……」
「だって、触ったり、いろんなことさせて……」
「うん……。驚いた……」
「嫌だっただろう?」
やさしい眼差しはそのままに、葉月はわずかに首をかしげた。
「初めは恥ずかしくて……豊さん、ちょっと怖かった。乱暴な感じで」
脅すような口調になっていたかもしれない。

「ごめんね……」
「ううん。だから、怒ってないの。だって私……」
葉月は言い淀んで、
「あの後何だか体が熱くなって、初めてしちゃったんだもん……」
頬が一瞬で紅く染まった。

(しちゃったって、何を……)
問うまでもなく、『オナニー』ということだろう。
 ぼくの体が熱を帯びた。『告白』をした葉月の気持ちはぼくの予想とはまったく違っていた。
「恥ずかしいけど、言っちゃう。あなたの指の感覚、いまでも残っているの……」
耳まで桜色に染めて言った。
 ぼくの指にも記憶の感覚はある。

 いつの間にかぼくに寄り添った葉月は身を任せる仕草に見えた。
「葉月ちゃん……」
「葉月でいい……」
「葉月……」
肩を抱き、唇を合わせた。
「うう……」
熱い息。体も熱い。柔らかな肉感がぼくにくっついてくる。

「私に触れたのは豊さんだけよ」
言いながら、彼女の手がぼくの股間に触れた。
「何回もしてくれたね」
「言わないで……恥ずかしい……」
「嬉しかったけど、だんだん悪いと思うようになって……」
「花言葉って一つの花でもいろいろあるの。ホウセンカもそうよ。西洋では『我慢できない』っていうんだって。触れると種が弾けるから。あの時、我慢できた?」
「できなかった……」
「だったらいいじゃない」
抱き合って横になっていった。

「花言葉、好きなの?」
「そうじゃないけど、爪を紅く染めた時からホウセンカは私の花なの。季節も誕生日と一緒」
シャツの下から手を入れて乳房を掴んだ。
「う……」
そして一気に下腹部へ滑らせ、密生した陰毛を潜って亀裂に指を入れた。
「うう!」
のけ反った葉月を引き寄せる。

 一帯は溢れた液に塗れている。
「感じちゃう……」
声を押し殺して吐息とともにぼくに訴えてくる。指が過敏な核を捉えると顎を上げて喉を鳴らした。
「感じるの?」
「うん……」
虚ろな目がうっすら開いた。
「我慢できる?」
「……できない……訊かないで……」
泣きそうな顔になった。
 ぼくはパジャマを脱ぎ始め、葉月も自ら秘部を露にしていった。
「ホウセンカの花言葉、まだあるのよ」
脚を開いてぼくに両手を差し伸べた。
「心を開く……」
(心を開く……)
「葉月……」
『我慢できない』ぼくの漲った肉は、心を開いて待ち受ける葉月の潤いの中に沈んでいった。




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