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ずぶ濡れのキス
【教師 官能小説】

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目覚めの朝-3

 将太は意を決して立ち上がった。「殴ってよ、ケニーおっちゃん」
「おまえ、どうなってもええんか?」
「目を覚ましたいんだ、ちゃんと」将太は真剣な顔でケネスの目を見た。「お願いだよ。じいちゃんの代わりに……」
「そうか。ほな」ケネスも立ち上がり、将太を自分の方に向けた。「覚悟せい!」

 パアーン!

 乾いた音が店中に響き渡った。店の隅のマユミが驚いて駆け寄ろうとしたのを、ケネスは目で制止した。

 将太はぎゅっと目をつぶって身体全体を硬直させていた。

 ケネスは将太の肩に優しく手を置いた。「終わりや、将太」
「え?」将太は意表を突かれたように目を瞬かせた。
「こ、これだけでいいの?」
「わいが健太郎どつき回した後な、あそこにおるマユミおばちゃんにわいがどつき回されてもうた。大事な息子に何てことすんねん! やり過ぎや、ってな」ケネスはウィンクして見せた。
「おっちゃん……」将太は少し涙ぐんでケネスの顔を見た。

「ええか、よう聞くんやで、将太」
 将太はケネスに殴られた左頬を押さえて、脱力したように椅子に座り直した。
「わいが今殴ったんは、おまえがその先生をちゃんと守ってやらんかったからや」
「守る?」将太は顔を上げた。
「おまえが毎週水曜日にやっとるんは、レイプやない。もはや和姦や」
「わかん?」
「おまえも、先生もお互いに惹かれあっとる。同意の上での行為や」
「え?」

「そやけどな、おまえの行為がエスカレートして、避妊もなんもせんと、何かの拍子に先生と繋がって、もし妊娠させでもしたらどないするつもりや? 責任とれるんか?」
「そ、そんなこと……」将太はまたうつむいた。
「妊娠したところで中絶したらええ、なんて簡単に思てたら、今度こそ承知せえへんぞ。テーブルひっくり返してでも、おまえをしばき倒したるからな」

 ケネスは席を立ち、何も言わず店の奥に消えた。
 取り残された将太は不安そうに周りを見回した。

 ケネスはすぐに戻ってきた。手には小さな箱が握られていた。
 将太の横に座り直したケネスは、その箱を将太に握らせた。
「たぶんな、おまえは初めからその先生のこと好きやったはずや。自分で気づいてへんかっただけや。そやからそうやっておまえの心を守ろうとしてくれてはる先生をおまえも守らなあかんやろ? 心も身体も」ケネスはウィンクをした。

 将太は小さくコクンとうなずいた。

「先生もおまえのその気持ちには早よから気づいてはった、思うで」
「え?」
「そら、初めはおまえを担任として相手してはったんやろけど、教師の責任感っちゅうか、おまえを何とかしたらなあかん、思て、おまえの身体の要求にも嫌々応えとったんやろな。そやけど、そんなこと繰り返す内に、おまえの中の苦しみにも気づいていった、そんなとこやろ。それに」
 ケネスはにやりとして声を潜めた。「おまえ、先生の好みの生徒やったんとちゃうか?」
 将太は赤くなって慌てた。「そ、そんなわけ、ないだろ! な、何言ってんだよ、おっちゃん」
「いやいや、大いにあり得るこっちゃで。おまえ、なかなかのイケメンやしな」ケネスは笑いながらカップを口に持って行った。

 将太がぽつりと、しかしはっきりした声で言った。「俺、先生に謝らなきゃ……」

 ケネスはカップを口から離した。「そうやな」

 将太は立ち上がった。ケネスは彼を見上げた。
「コーヒー代、いくら? それに、こ、これも……」将太はケネスに手渡された小箱を持ち上げた。
「かめへん。持っていき」
「え? でも……」
「ほたら、出世払いせえ」
「『出世払い』?」
「おまえが働き始めて、最初にもろた給料から払え、っちゅうこっちゃ」
「おっちゃん……」
「コーヒーはたった450円やけど、その金も働かな手に入らんのやで。おまえのじいちゃんのように誠実に働かな」
「わかってる……」

 ケネスも立ち上がり将太に歩み寄って、その肩を軽く叩いた。
「今からどないすんねん?」
「学校に行くよ」
「学校に?」
「だって、俺、鷲尾先生に土下座しなきゃなんないし」

 ケネスはふっと笑った。「その後、抱きしめてやり」

 将太は頬を赤く染めて笑った。


 将太が自転車に跨って、焦ったように学校の方角に走り去った後、見送ったケネスの鼻に冷たい雨粒があたった。
「降り出したみたいやな……」


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