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終わり良ければ
【女性向け 官能小説】

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終わり良ければ-2

2.
「コーヒー入れましたの、ついでですので」
裕美が、秋山のデスクにコーヒーカップを届ける。裕美は職場が替わって、秋山の下で働くようになった。システムの基礎研究と基本設計を担当する健二の部署は、直接顧客に接することがないので、時間的には余裕がある。
裕美は、健二が上部に掛け合って配置転換をしてくれたと、同僚から聞かされていた。健二が自分に好意を持ってくれていると思うと、つい、健二のデスクにコーヒーの一杯も届けたくなる。
健二と裕美が出来たと、皆がささやくようになった。
映子は、ことの成り行きに心が騒いだ。せっかく、健二にコーヒーに誘われて、心がときめいていたのに、とんびに油揚げとはこのことか。
「秋山さん、この前はコーヒーご馳走様。三条さんは、その後どうですか」
映子は、健二に探りを入れてみた。
「うん、お陰さまで何とか落ち着いてくれて、平さんも喜んでくれた。助かったよ」
「今度は、私がコーヒーをおごります。会っていただけますか?」
「ああ、もちろん、いつでも良いよ」
「それじゃ、後でメール入れます」
「ああ、分かった」

映子が指定してきたのは、今やデートスポットで名高い、お台場の海浜ホテルのラウンジ。コーヒーのお返しにしては大げさだなと秋山は思ったが、特に断る理由もないのでOKをした。
金曜日の退社時間になると、それぞれに新橋のユリカモメ乗り場に向かった。
東京湾を上から見下ろす夜景は、東京育ちの秋山にとっても初めての体験。普段は用のないところだけに、ひどく遠くに来たようなエキゾチックな気分に浸る。隣に座る映子が、懐かしくも頼りがいのある不思議な雰囲気をかもし出している。人というものは、知らない所に来ると、知っているものに愛着を感じるようだ。健二は、腰を接して並ぶ映子が、こよなく愛しく思えた。

3.
浜辺のホテルに着くと、映子は
「お腹すいたでしょう」と言う。
お茶に誘われたはずの秋山も、この時間になれば当然腹がすく。
「何か食べようよ」
二人は海浜グリルの窓辺に席を取った。
ついさっき迄、オフィスでディスプレイと睨めっこをしていたことが、まるで嘘の様である。
「外国に来た見たいだねえ」
「ほんと、こんな世界がこんな近くにあるなんて、嘘みたい。私たち、一体毎日何してんだろうと思っちゃうわね」
ワイングラスで乾杯する二人の目は潤んで、早くも夢見心地である。
「新婚旅行って、こんな感じなのかしら」
映子が、うっとりとした顔でつぶやく。
「そうだねえ。未だ経験がないから分からないけれど、多分ねえ」
「最近、みんななかなか結婚しないじゃない。毎日、ディスプレイばかり見ていて、脳の働きがセットされちゃっているのかなあ。たまにはこんな経験をすれば、もっと結婚でもしようって気になるかも知れないわね」
「映子さんは、結婚しなんですか?」
「あら、それは私にプロポーズですか?」
「えっ、そんな積りじゃ」
「じゃどんな積りなの。私じゃいやなんでしょう。三条さんとならいいんですか」
「ぜんぜんそんな積りはありませんよ。元公爵家のお家柄で、わが社の最大お客の娘なんて、僕にはとても荷が重過ぎる」
「だって、社内でもっぱらの噂ですよ、秋山さんは、逆玉に乗るんだって」
「止してくださいよ、僕には映子さん位が丁度いいんだよなぁ」
「上でもないし下でもなしですか。丁度良いなら、奥さんにして下さいな」
「映子さんとこうしていると、いつまでも君に傍にいて貰いたいなんて気分になちゃいそうだな」
「健二さん、一寸外に出て頭を冷やしましょう。気分で結婚して、気分が変わったからって離婚されたんじゃ適いませんからね」


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