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命令チップ04
【SF その他小説】

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高層ビル-1


大通りを影山と二人で歩いている

救急車が何台も高いサイレンを鳴らして通り過ぎた。

前から会社帰りのサラリーマン達が駅を目指して歩いている。

僕達はその流れに逆らっていた。

影山は並ぶと痩せて背が高く、猫背で気味が悪い。

無表情で進む彼を僕は操っていた。

もうこれで影山は僕の命令には逆らえない。

職場の人たちや町中の関係ない人たちを殺めた彼だが、

この期に及んで、ぼくが影山を裁いていいものか悩んだ。

僕達が目指しているのはこの街で一番高いビルだ。

悩みながら歩いていたら着いてしまった。

高層ビルを見上げると窓ガラスに夜空の月が写っている。

会社帰りの人が出てきている

二人でロビーに入りエレベータで最上階に行く。

階数のアナウンスが鳴りドアが開いた、

エレベータホールの出口に透明なドアがあり横に機械が設置してある。

どうやら社員カードが無いと入れないらしい。

「せっかくここまで来たのに入れないよ、他のビルを探すわけにもいかないし……影山の使えるかな?」

僕は影山の目に入り周りを見る。

すると、両脇に無数のボタンと矢印が表示してあった。

「なるほど、影山のは僕が使っていたのとは少し違うんだな」

僕は自分のスイッチを押す要領で通路を歩く女性のボタンを押した。

彼女が停止する。

「ほう、使えた」

彼女の手足はどこか遠くにある感じだけど、どうにか動かす事ができる。

彼女を使ってドアを開けてもらった。

「ありがとう」

通路を見ると非常階段の表示があるので、彼女に開けてもらう。

「じゃあ、仕事に戻っていいよ」

扉をしめて彼女のスイッチを切る。

影山と二人、非常階段を上がり高層ビルの屋上に出た。

風が吹いている。

ヘリポートの脇を通り、周りにある柵に影山を登らせる。

「店の皆は飛び降りて死んだ、だから同じ罪をかぶってもらうよ」

影山を屋上の縁にたたせて金網を掴ませて、大きく深呼吸し

「これが最後の審判だよ」

影山のスイッチをオフにした。

影山の目が戻ったと同時に体を振って何か言おうとしていたが、

金網を掴んだ手を見て驚いている

「うぁ! どこだここ? ビルの屋上?」

慌てる影山の前に立ち

「操られる恐怖が分かったかい?」と聞いた。

影山は僕をにらみ

「俺を操ってここまで連れてきたのか?」

「ああ、道中は仲良く並んで歩いたよ」

「なるほど、本当に操られている間は記憶がないんだな、一瞬でここまで来たようだけど周りが暗くなってる」

「そうだよ、さっきの人達は気づいたら舌が無く苦しんで死んだんだぞ」

「何を言っている、お前が早く教えれば死なずにすんだんだ」

「人を殺してまで聞くほどじゃないだろ、あんたは異常だよ」

「異常じゃない、神だ」

「まだ言ってんのかよ、これじゃダメかもな」

「何がだ?」

「影山、あんたがその力を使わないと約束してくれるなら助けてあげてもいいよ」

「助ける? 何がだ?」

「店の皆は屋上から飛び降りて死んだんだ、
 あんたにも同じ方法で死んでもらうためにここまできたけど、
 やっぱり人殺しは出来ない、
 あんたが会心してその力を使わないなら、止めてあげるけどどうする?」

「どうする? 力を持っていながら使わないなんて考えられないだろ」

「あんたが使えば僕には分かる」

「力の無い俺なら生きてる価値がない、使わないなんて事ができるか!」

残念だ、命乞いすると思ったのに、人は違うものだ

「それならしかたがないね、」

「やれるものなら やってみろ」

いつの間にか後ろの非常階段を駆け上がってきた男達がいて、

僕を目指して走ってきた。

「無駄なのに…」

スイッチオン

後ろの男達は足がもつれて倒れてしまった。

影山の頭を使って彼らを操作して帰らせた。

「残念だよ」

金網を掴んで立ち尽くす影山を置いて、僕は屋上から降りた。


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