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少女剣客琴音
【歴史物 官能小説】

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松蔵稽古-1

「御免、ここは多田監物氏のお屋敷か」
門の外で若い男の声がする。琴音は下人を行かせて確かめさせた。
「お嬢様、桑野松蔵というご浪人がお会いしたいと」
「私に? いったいどんな用事であろう。名前に憶えはないが」
門の内側から琴音が問いかける。
「桑野松蔵と申すのか。私が多田琴音だ。いったい何用で参られた」
「佐野無角先生から、琴音殿を助けるようにと言われ馳せ参じました」
「師匠から? 今しばしお待ちを」
門を開けさせると見上げるような背の高い青年が立っていた。
けれども身なりは粗末でザンバラ頭に無精ひげと来ている。
婦女子に面会に来た姿とは思えない。
「まず中へ。そして話を伺おう。私を助けるとはどういうことか?」
「無角先生は琴音殿に剣を教えよと、それが助けることになると」
「それはおかしい。私は無角先生から3本のうち1本を取っている。これ以上習うことがあるとは思えない」
「先生はその対戦をするとき、『水流』と『破の剣』だけを使った筈。
でも実際にはその上に奥義があって、それはまだ伝授してないのだ」
「なに? その上の奥義とな。それを貴殿が修めたというのか。おもしろい。
私と立ち合ってそれを証明してもらおう」
琴音は桑野松蔵の言うことを信用できなかった訳ではない。だが、自分が無角流を修めたと思っていたのに、まだ上があるという松蔵の言葉に腹が立ったのだ。
これは理屈ではない。相手が奥義を修めた者だろうとなんだろうと打ち負かしたい気分なのだ。
早速支度して琴音は木刀を構えた。最初は『水流』で斬ろうとした。『水流』は川の流れが石を避けて通るように、相手の太刀筋を見極めてそれをかわして素早く斬る方法である。
その為に自分の太刀筋を悟られないことと、相手が追いつけない速度とタイミングが必要になる。
構え方も横に払うのか縦に斬り下ろすのか突きを入れるのか、はたまた袈裟懸けか逆刃で行くのか分からないようになっている。
特に1対1の場合は構えの変化が多く、相手を幻惑させる。
だが啓次郎は同じ無角流なので、手の内を知っていると見て良い。
「でやぁぁぁぁ」
琴音が気合一閃斬りつけると、何故か相手の木刀が絡んで回転し巻き込んで来た。
危うく木刀を撥ね上げられそうになった。
「とおぉぉぉぉ」
琴音は今度は『破の剣』で木刀を叩き落そうとした。
しかし今度も木刀が絡んで来て衝撃は殺された。
そして木刀を回転させて琴音の手からもぎ取った。
琴音の木刀は宙を舞ってから地面に落ちた。
「これが『長髪剣』だ。長い髪の毛のように絡んで相手の剣を捕えるのだ」
松蔵はそう言うと木刀を置いた。
「ところで奥義の件については納得して頂けたであろうか」
「納得したくないが、やむを得まい。つまり松蔵殿は私の兄弟子ということになるのか」
琴音は苦々しい顔でそう言うと早速気になっていることを言った。
「ところで宿はどこに取っているのだ、松蔵殿。まさか無角先生のように宿無しではあるまいな」
「宿無しでござる。であるから、泊めて貰わねばならない」
「だが、若い男を泊めれば、変な噂が立つ。私も嫁入り前だから困るのだが」
「泊めて貰えなければ、拙者は引き返すしかないが……」
「それも困る。師匠から頼まれたことだから果たして貰わねば」
「では、どうすれば」
「父と相談して宿になる所を捜してもらう。ところで稽古は今日から始めるのか?」
「そうだ。御前試合まで猶予はない」
「では師匠は御前試合のことを心配して、貴殿を寄越したのか」
「他に何がある。あれだけ津々浦々にまで喧伝されれば、道端の草にまで知れ渡るわ」
そういうと松蔵は布を取り出して琴音の手を取った。
「松蔵殿、何をする積りだ」
松蔵は琴音の両手首に布を巻いた。今で言えばリストバンドのような感じだ。
「『長髪剣」は素手での柔術から始める。特に使うのは手首だ。柔術は心得ておるか?」
琴音はふっと笑った。誰に聞いているんだ、とでも言うように構えて見せた。
「ほう、少しはやるようだな」
7寸(21cm)以上身長差がある2人はその場で構えると組み合った。
手先を取り合って琴音が松蔵の逆手を取って投げた。松蔵はもんどりうって地面に打ち付けられた。
ところが松蔵は笑って起き上がると言った。
「宜しい。基本はできているようだ。ではもう一度今度は加減しない」
「負け惜しみを言ってるように聞こえるが」
琴音は手を掴んで来た松蔵の手を捻り上げようとしたがするりと抜けて逆に捻られそうになる。
それをまた捻り返そうとすると、さらに逆を取ろうとしてくる。その攻防を繰り返して気がつくと琴音は自分の両腕が首の前で交差して背後から両手首を握られて極められてしまった。
 


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