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少女剣客琴音
【歴史物 官能小説】

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三千代の愚痴-1

ここは街道筋の宿場町。宿の裏手に人相の良くないゴロツキたちが集まって女連れの老人を囲んでいる。
そこで押し問答がなされている。
「爺さんに若い女の2人旅ってのは物騒じゃあねえか。
俺たちが道ずれになって安全な所に送ってやるよ」
「折角じゃが、この近くの美濃屋に用があって来た者。
そなたたちの世話にはならんでも辿り着けるから手助けは無用のこと。
さあ、こんな裏手に連れ込まず、道を開けてくださらんか」
「おやおや、俺たちの手助けはいらんと言うのかい。じゃあ、自分たちで道を開けて通って行けば良い。おっと、待った。この可愛い娘を置いて行きなよ」
「きゃあ、何をなさいます」
「お嬢様に何をする!」
「うるせえ、この老いぼれ」
「おいおい、いい加減にしたらどうだ」
ゴロツキたちは一斉に声がした方を見た。
今まで気がつかなかったが裏手の物置のムシロの中からうす汚い浪人が起き上がった。
無精ひげにザンバラ髪だが身の丈は5尺7寸もある大柄な男である。
腰に差しているのは2尺7寸という長めの刀。背中に汚れた風呂敷包みを担ぎ、腰にはやはり汚れた袋をぶら下げている。
「なんだ、てめえは?」「サンピンは引っ込んでろ」
ごろつきと言っても腰には一本ずつ脇差を差している。そういうのがひいふう……いつ、むう……7人もいるのだ。
「ここへ来る途中聞いて来たことだが、確かにこの界隈はおぬし達の言う通り物騒な所らしいな。
性質の悪いゴロツキが旅の者を苦しめていると聞いた。なるほど確かに目の前の出来事がまさにそうらしい」
ゴロツキたちは浪人を囲んだ。そのうちの1人が浪人の腹を殴りかかった。浪人は途端その腕を絡め取ると逆手を取ってから地面に投げ飛ばした。
「野郎!」「たたんじまえ」
掴みかかった2人の喉元を片手ずつ掴んで足をかけて突き飛ばす。突き飛ばされた2人は後ろにいた3人にぶつかって重なって倒れた。
残りの1人が脇差を抜いて斬りかかったが、簡単に手を掴まれて物置の壁に投げつけられる。
「くそっ、おぼえていろ」「ひきあげろ」
ゴロツキ達はあっという間に蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「あのう、ご浪人様。助けて頂いてありがとうございます」
老人は頭を下げて礼を言う。娘は惚れ惚れとした目で浪人を見て老人に言った。
「佐平や、お名前を聞いてお宿を伺っておくれ。是非お礼をせねば」
「そうです。是非あなたさまのお名前をお聞かせください。今夜はどこのお宿にお泊りかな?」
「拙者、旅の素浪人で桑野松蔵と言う者。急ぎの旅故これから先を急ぐ。故に宿はない。だがついでなので美濃屋というところまで一緒に送ってさしあげよう」
そう言うとさっさと表通りの方に歩いて行った。
老人は慌てて娘の顔を見る。
「三千代お嬢様、いかがいたしましょう?」
「とにかく一緒に美濃屋まで行って、そこで引き止めましょう」
だが3人が美濃屋についたときに桑野松蔵は手を上げて2人に別れを告げた。
「どうしてそのようにお急ぎになるのですか?」
三千代の問いに松蔵は快活に答えた。
「実は私は婿入りに行く途中なのです。遅れると妻になる人が危ない目に会うので急がねばならないのです。では御免」
そう言って去って行く後姿を見て三千代は佐平に言った。
「良い方にめぐり合えたと思えば、それはもう人のもの。つまらないわ。佐平」

 


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