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BLACK or WHITE?
【幼馴染 官能小説】

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−5−-3

ばつの悪そうな表情を浮かべて、彼女はすっかり意気消沈しているようだが、謝られても孝太郎にとっては腑に落ちない点が残っている。
「あっ、罪滅ぼしってわけでもないけど、もしお前に好きな子いるなら絶対協力するから、遠慮なく言えよ!あたし、こう見えて割と顔広い方だからさ!」
 俯き加減だった顔をぱっと上げると、椎奈は精一杯の笑顔を見せた。幼い頃から見慣れている、彼女のチャームポイントである八重歯が、口元からちらりと覗く。
孝太郎は、知らぬ間にぐっと、強く拳を握り締めていた。さっきまで落ち込んでいたくせに、もう明るい顔を見せて、こんな風にあどけなく微笑んでくる。その無邪気さが、時に残酷だ。確かに、はっきりと言葉にして思いを伝えてはいないが、あれだけ行動で示してみても、気付いてもらえないのか。それとも、自分を男として見るつもりはないのか。
彼の胸の奥に、焦燥がちりちりと焼け付くように燃え上がり始める。
「懲りないよな。そういう押し付けがましいの、すごい迷惑」
 想像していた以上に辛辣な孝太郎の言葉に、椎奈の表情が微かに強張る。彼は助けなど必要としていないのに、ただ自分が赦されたいがためだけに、余計な提案をしたのだと思われてしまったのだろうか。とにかく、軽率な発言が彼の気に障ったのは明らかだった。椎奈は笑顔を消し、神妙な顔付きで再度謝罪した。
「本当に、ごめんなさい。反省、してる……。できるだけ迷惑掛けないようにするから」
 堅く口元を引き結んで、寂しげに目を伏せる椎奈の様子が孝太郎の目に映り、彼女を傷付けてしまったのだと一瞬で悟った。あまり見せないその表情に、心が鋭く抉られる。だが、それでも自分自身の制御ができない。ずっと胸の奥底に隠していた思いの丈をぶち撒けてしまいたい衝動が渦巻いていて、歯止めが利かない。
「……自分の事だって、ちょっとは考えたりしないわけ?」
「え?」
 ぐっと絞り出すかのように苦し気な声で彼が漏らした一言に、椎奈は俯いていた顔を上げた。切なく歪められたその表情に、彼女の目は釘付けになる。胸の鼓動が騒ぎ出す一方、体は縛り付けられたように、身動きが出来ない。
突然、孝太郎の腕に強引に体を抱き寄せられて、唇を奪われた。温かい感触が、椎奈の唇に触れる。もう3度目の、彼との口付け。湿った薄い唇の感触に、胸が騒ぐ。意識が浚われかけるのを何とか繋ぎ止め、思いっきり彼の体を突き飛ばした。少しよろめく程度なのが、彼と比べて自分の非力さを思い知らされたようで憎々しい。
「そういう事は、好きなヤツにでもすればいいだろ!?また、あたしの事からかって……っ!」
ぐっと、手の甲で唇を拭いながら、椎奈は強く言い放つ。
「っだから、お前にしたんだろ!」
それ以上に強い思いを込めた声で、彼が叫んだ。ついさっきまでのしおらしさはどこへやら、負けじと彼女も声を荒げると、
「はぁ!?冗談もいい加減に……!」
「お前の事が好きなんだよ!」
「そう、好………へ?」
ようやく彼の言葉を認識した彼女は、ぽかーんと口を開けたまま固まる。
「何とも思ってないヤツにこんな事するわけないだろ」
相変わらず、椎奈は目が点になったような状態で、ぼーっと彼を見つめている。何度その言葉を頭の中で反芻しても、実感が湧かず、信じられなかった。
そんな彼女を余所に、孝太郎は言葉を続ける。
「お前の気持ちも確かめずに、その、いろいろした事は悪いと思ってるよ。でも、何も行動を起こさなかったら、ずっと幼馴染のままだから……」
地に足がついている感覚が薄い。力を抜いたら、すぐによろめいて倒れてしまいそうになる。正面を向いているのがつらかった。知らない。こんなの、知っている幼馴染じゃない。
「それじゃ、ダメ、なのか……?」
ようやく、椎奈はそれだけ答えた。
「俺は今のままじゃ嫌だ。ずっと、お前だけが好きだった」
熱い視線で射抜かれて、椎奈はますます言葉を失う。こんな顔をみせる彼など、滅多に見た事がない。こんな真剣な視線を、軽く躱せるはずがない。どう答えれば良いものか、考えあぐねていると、
「へぇ〜、孝ちゃん、お姉ちゃんの事好きだったの?」
突然、背後から、のんびりとした第三者の声が割り込んできた。
「あっ、杏子……!?」
椎奈は慌てて振り返る。こんな恥ずかしいところを可愛い妹に見られてしまい、かぁっと耳まであからさまに真っ赤に染まる。
「お姉ちゃん、ただいま〜。帰る時間が重なるなんて偶然だね」
杏子はひらひらと手を振りながら、にこりと愛らしく微笑んだ。間延びしたその声が、孝太郎には妙に嫌味ったらしく聞こえる。
孝太郎の告白に対してどう返答すべきか、杏子にこの状況をどう弁解すべきか、2つの事を同時に考える事を迫られ、椎奈はますますパニック状態に陥る。右側は孝太郎から、左側は杏子から、それぞれ意味深な視線を投げ掛けられて、椎奈は内外同時に板挟み状態、追い詰められて、焦りだけが募る。自分が立っている場所が、視界が、ぐらぐらと歪んでいるような錯覚に陥る。
「……うあぁぁ、もう無理っ!!」
ついに、それが限界に達し、意味不明な叫びをあげながら、家へ逃げ込んでしまった。
一気に気が抜けた孝太郎は、肩を下しながら、ふぅ、と軽い溜息を吐く。そして、直に杏子と対峙する格好になり、
「お前さ、わざとあのタイミングで出てきたのか?」
「人聞きの悪い事言わないでよ。私もちょうど帰ってきたところだから。そもそも、こんな人通りのある場所であんな事する方が悪いんじゃないの?」
言葉の刺々しさと同じ位、挑発的な厳しい視線で孝太郎を睨め付け、杏子もそのまま家の中へと入っていった。玄関に脱ぎ散らかされた椎奈の靴を直すと、杏子は心配そうに、二階の姉の部屋の堅く閉ざされた扉を見つめた。


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