投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

forget-me-not
【女性向け 官能小説】

forget-me-notの最初へ forget-me-not 76 forget-me-not 78 forget-me-notの最後へ

言えなかった「好き」-1

ゆっくり身体を起こしたあたしは、陽介の背中に触れようとする。


身体だけの割り切った関係、それだけでよかったのに、それすら叶わなくなったなんて。


あと数センチで届くと言うのに、陽介が遠い。


背中に触れようとしている手がプルプルと震えると共に、あたしの目からさらに大粒の涙がポタポタと太ももの上に落ちた。


「な、何で……? 恵ちゃんと別れたんなら別にいいじゃん……」


「ごめん、くるみ。ダメなんだ」


「どうしてよっ!」


荒げる声を陽介の背中にぶつける。


陽介の帰る場所はあたしのはずなのに、あの娘が絡んでくるとこうも陽介はおかしくなるなんて、納得いかない。


込み上げてくる苛立ちをぶつけるように、何度も背中をドンドン叩いていると、ようやく彼はあたしの方を振り返って、あたしの手首をグッと掴んだ。


「くるみ!」


怒りに任せて叩きつけていたから、陽介は怒っているのかもしれない。


強い口調で名前を呼ばれると、反射的に目をギュッと閉じて陽介から顔を背けた。


でも、次に待っていたのは怒号なんかじゃなかった。


陽介は泣きわめくあたしの手首をしっかり掴んで、真っ正面から向き合おうとしていて、恐る恐る目を開けると、そこには寂しそうに笑う顔があって。


「……俺、やっぱりメグが好きなんだ」


怒号なんかより遥かにあたしを傷つける言葉を、陽介は悲しげな笑顔と共に、あたしに向けた。


陽介の掴んでいる手がフッと緩んで、あたしの手は力なく落ちる。


心のどこかではわかっていた。


でも、陽介の口から聞くまでは見ないようにしていた現実も、目の前に叩きつけられると、ただ無気力な身体に涙だけが流れてくる。


静まり返った部屋で、あたしの嗚咽と掛け時計の秒針の音だけが、やけに耳を痛くさせた。








forget-me-notの最初へ forget-me-not 76 forget-me-not 78 forget-me-notの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前