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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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メイ-17

「幸せ者だな、メイは。

こんなボロボロになっても探し続けてくれるような優しい人が飼い主でさ」


久留米さんがメイにフッと笑いかけた。


その言葉に、あたしは今の自分の状態がいかにひどいものかを思い出した。


泥だらけで所々破れてしまった服、泣きすぎて目の周りが真っ黒になった顔、八つ当たりして自分で痛め付けた右手。


あたしは今の自分のあまりのみすぼらしさに、身を縮めてしまった。


「恥ずかしがらなくてもいいと思うよ。

そんな泥だらけになってまで探すなんて、よっぽどコイツが大事なんだな」


久留米さんが以前のような優しい笑顔を見せてくれたもんだから、あたしは目頭をグリグリこすりつけてからニッと笑い返した。


「そりゃあ、あたしの大事な家族ですから!

毎晩あたしの話を聞いてもらいながら一緒に寝るくらい仲良しなんだもんね!」


そう言って、メイの背中をゆっくり撫でてあげると、彼女は気持ち良さそうに目を閉じた。


「話?」


笑みは疑問に変わり、キョトンとした顔をこちらに向ける久留米さん。


「この子、人の気持ちに敏感みたいで、あたしが悲しい時や辛いときは必ずそばにいてくれるんです。

何かしてくれるってわけじゃないけど、それだけですごく慰められてる気がするんですよ。

あたし、久留米さんから避けられるようになって、毎日泣いてばかりいたんだけど、メイがいてくれたからずいぶん励まされ……」


そこまで言ってハッと口を押さえた。


こんなこと言ったら、久留米さんに負担かけちゃうじゃん……!


案の定、メイが見つかって和やかになった空気が、一気に張り詰めたものに変わってしまった。


なんとか、ごまかさないと!


「って言うのは冗談です!

だから聞かなかったことにして下さ……」


冗談にしてしまおうと、あたしは胸の前で両手を小さく振りながら、わざと明るい声で笑いかけたけれど、久留米さんは笑いもせずに振り返ったままの顔を俯かせて黙ってしまった。






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