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クラスメイトはスナイパー
【コメディ その他小説】

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スナイパー〜二匹の小鳥〜-8

その男性の顔を視認した僕は絶句した。酷くやつれた顔付きに大きく見開かれ充血した目、骨と皮だけのような歪んだ鼻に、裂けた唇からは長く細い牙が二本、自身の顎を貫く様にして生えている。
大きく開いた瞳の瞳孔を僕に向けた男性は、裂けた口をまだ更に開けた。

「うわぁぁぁ」

「伏せてっ!」

僕の叫び声を掻き消す様な鋭く尖った声が辺りを響かせた。
その言葉にしたがい、僕は体をその場に突っ伏させる。

ドゥン、ドゥン……
空気を奮わせる轟音が僕の鼓膜を鼓動させる。そして、それと同時に目の前にいる白髪の男性の上半身が大きく上下に揺れた


白髪の男性の細い上半身からは大量の血液が流れ落ちている。
しかし男性はその滴り落ちる血液を見て一度ゆっくり首を捻っただけで、まるで倒れる様子も怯む様子もない。

「くっ、やっぱグロックじゃ無理か」

後方に立つ紅髪の女性は、そう言うなり左足に縛り付けたホルダーから刃の大きいナイフを素早く取り出し、身を丸める様に前屈させた。そして、その体制から左足を一歩前に踏み出し、残された後方の右足を勢いよく蹴りだし前方に立つ白髪の男を目掛けて飛脚した。
一瞬にして白髪の男の懐に飛び込んだ女性は、一度ナイフを持った右腕を後ろに引く。息をつかせる間も与えず、女性は引いた右腕にあるナイフを前方にある男性の首に目掛けて横向けに振り出した。
しかし男性は大きく半身を後方にのけ反らせ、女性の斬撃を回避してみせた。
女性が振り出したナイフは、空を切る思い切りのいい音で男性ではなく空間を真っ二つに切り裂いたのだ。

上半身を元の体勢に戻した男性は、歪んだ不適な笑みを女性に向けた。 だが、男性の瞳に映ったのは彼が想像した恐怖に怯える女性の姿ではなかった。

そこには悪戯な笑顔を自身に向ける女性の姿があったのだ。

次の瞬間、全身を赤黒い羽毛で纏った一匹の小鳥が羽ばたいた。
左足を軸に半身を大きく捻り、助力をつけたウグイの蹴りが男の頭部を直撃する。更にウグイは自方向に崩れ落ちる男性の顔面に左の掌で掌ていを放った。
飛び散る鮮血と共に男性の口から生えていた牙が吹き飛ぶ。
ウグイの放った掌ていにより、半身が後方にのけ反った男は倒れ落ちる刹那、ナイフを持ったウグイの右腕を掴んだ。そしてのけ反った状態から勢いをつけるように上半身を大きく右に捻り、続いて上半身を戻すのと同時に身体を左に捻ってみせた。
男に右腕を握られたウグイの細い身体が軽々しく宙に浮かんだかと思うと、男の体が左に捻られたのを合図に、ウグイの体は硬いコンクリート性の壁にたたき付けられた。

「かはっ」
大地を揺るがす衝撃がウグイに襲いかかった。
ウグイが壁に激突したのを確認した後、男は掴んだ右腕を支点に、物を振り回す要領でウグイの体を続きざまに右の壁に叩きつける。

「くはっ」

何か硬い物が砕ける様な音と同時に、ウグイの口から自身の紅髪より一層赤い鮮血が吹き出す。

男は苦しみに歪むウグイの表情を見て嬉しそうな狂喜の表情をみせる。そして、ウグイの手を握ったまま自身の半身を右後方に傾けると、目一杯の力と共に半身を元に戻し、ウグイを天空にほうり投げた。


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