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君を救いたい
【純愛 恋愛小説】

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好き、だけど・・-10

梅雨が、容赦無く俺の頭と肩に当たる。周りではその天候に合う物を差し
笑みを浮かべ隣の相方に言葉を交わす人々が目に映る中、俺は構わず例の待ち合わせ場所
に足を運ばせて居た。

気温も低く、先ほどから荒げる息からは、白い息が目に映り

・・待ち合わせの時間に、余裕を持ち、当然このような天気に、玄関にある傘を拝借し
普通に目的地に向かっていた筈の俺・・

しかし不覚にも、昨日の練習と怪我ですっかり寝坊してしまい、雨も慌てて家を出た後に
突然振り出し、家から傘を持ち帰ろうにも、自宅から結構離れてしまい、結果的にこのような惨めな思いをしてしまい。

それから例の公園が見えてきて、安堵の表情を浮かべ、走る足を加速させる。


「遅れてゴメン!」

公園に設置してある時計に目をやり細い針が、「3」を差しており・・とても遅いとは言えないが立派な遅刻だ。俺は、一回り先に雨宿りをし、寒い中待っていた私服姿の楓に
謝罪の言葉を投げた・・、最近の俺、謝ってばっかのような・・

俺がやっとこさ来た事に気づき、不機嫌そうな顔を向け

「もう!おーそーいーっ!15分遅刻!」
「いやー、ちょっと寝坊しちゃって、昨日の怪我と練習もあって」

珍しく自己弁護を口にする、普段はこんな事、言葉にするつもりは無いのだが

「だから何よ、水族館に行こうって誘ったのはアンタの方でしょ」

何の返答を期待したのか、雨でずぶ濡れの俺を見ても何も心配してくれず、俺は彼女の言葉に、とても冷たい物が、皮膚に当たったような気持ちに苛まされ。

それから少しの間、雨の音が虚しく響き渡る中、俺らの間で静寂な空気が流れるも彼女が
「それじゃ、いこっか!」とニコッとさせ、見事な切り替えで、公園を後にする。

俺は傘を持ってこなかったので、楓の傘に入れて貰った、特に言葉は交わさず
横に居る楓は、この街で初めての水族館に胸を躍らせ、快調な鼻歌が先ほどから耳にする

「・・楽しみ?水族館・・」
「うん!まさかのお天気だけど、建物だから大丈夫よね」
「そっかぁー、確かに」

上機嫌な楓、だが俺はこの気温のように心が冷たく、厚い毛布で心を暖めたい欲求に苛まされ・・。

「大丈夫?寒くない?、カイロあるけど」

隣で同じく信号待ちをするカップルのさり気無い会話を耳にし、その言葉を聞いた俺は
ふいに、樹里奈を思い出す・・。

何故楓は俺の事心配してくれないのだろうか・・。そりゃーいちいち心配してくれ、何て
思うのは可笑しいし、楓の言う事は最も何だろう・・
でも俺の中で妙に、心にポッカリと、穴が空いたような感覚が消えず。
隣で笑う少女が時々知らない人に見えてくる・・、彼女は俺にとって・・

「・・しゅう・・しゅう!」

彼女は・・もしかしたら・・

「シュガー!返事をなさいっ!」
「うわっ!?」

想い老けていた俺に声を掛け、我に帰る。

「・・どうしたの、ボーっとしちゃってぇ・・」
「あ、いや別に・・うっくしっ!」

雨と冷風に当たり過ぎで、思わずクシャミが出て、俺はまた何を期待するのか彼女の顔を
覗くと・・。

「おやおや若いの・・、サッカー部に入ってるのにどうした?」

無性にイラッとくるも次には

「まっ、今日は楽しい水族館日和さねっ!つまらん事は忘れましょう!」

その言葉で、ノートの上に付き捲った汚い消しカスが、見事に一層されたように、苛々が
治まり、遠くで見えてきた水族館に足を運ぶ俺と楓・・。





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