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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第6章 狂宴-5

 だがボディガードに取り押さえられ、驚きの表情を浮かべている彼女を見ると、改めて喜びが込み上げてくる。いいぞ、猿芝居が功を奏した。ここまでは順調だ。
 報道部の女共に自白させるまでもなく、紫織さんが俺の身辺を嗅ぎまわることには察しがついていた。もっとも、その速さと正確さについてはこちらの想像を超える域で、昨晩、調査書を見せられた時には、さすがに舌を巻いたものだ。
 だが彼女は致命的なミスを犯した。恐らく考えもしなかったのだろう。理事長、ひいては鳳学院経営陣が、既に俺の支配下にあるということを。
 もともと誕生パーティは彼女を誘い出すための舞台であり、情報が筒抜けとも知らず、みすみす罠に飛び込んできた紫織さんは、今や俺の手の内にある。さすがに会場を取り巻く警備隊全員にまで教育は行き届いてないが、彼らを指揮するのは教育を施してあるボディガードで、今夜の動員は警備の実地訓練と言い含んでいるはずだ。後はこちらの息のかかった者が、理事長と待機している綾小路家調査部の者を捕えれば、外部からの邪魔は入らなくなる。
 ああ、それにしても、この日をどんなに夢見てきたことか。ずっと恋焦がれてきた想いがようやく報われるのだ。
 初めて紫織さんを見かけた時のことは、今もはっきり覚えている。あれは、旧華族が集まる交流会での事。いやいや参加させられた退屈な催しにうんざりしていると、運命の出会いが訪れたのだ。気高さを称えた美貌に、知性の輝きを宿す瞳。他の女共とは一線を画す高貴なオーラを放つ彼女に、中学生だった俺は一瞬にして心奪われてしまった。
 しかし没落した九条家の嫡子にとって、綾小路家のご令嬢は到底手の届かぬ高嶺の花。今にして思えば俺が権力を欲したのは、彼女と同じ高みに立ちたかったからではないだろうか。だが、今の俺には力がある。人を支配し、思い通りに操る力が。その力を紫織さんに認めさせたい。いや、彼女はこんな力を決して認めたりしないであろうが、大勢の人間を従わせる姿を見せつけたかった。
 「これだけ申してもまだお分かりいただけないのですか。麻薬で人を操るなどとんでもない。皆、私の志に共感して、誠意を見せてくれてるのですよ」
 あくまで紳士的な態度を貫きながら、ゆっくり椅子から立ち上がる。テーブルに押し付けられた彼女は、何とか逃れようと身をよじるが、それでプロのボディガードの束縛から逃れるはずもない。乱れた胸元から谷間が覗くのに目を惹かれるが、今はまだ紳士の時間だ。テーブルを回り込んで彼女に近づく。
 「馬鹿なことを、そのような虚言を信じるとでも!」
 先程までの冷徹な態度は見る影なく、問いただす様な口調には怒りと焦りの色が濃い。もちろん、この状況で俺の話を信じるわけもないが、彼女の狼狽は見て明らかだった。
 「本当ですよ。そうでなければ貴方が理事長に渡したはずの調査書を、私が持っているはずがない」
 はたして決定的な証拠を示され、俺の言葉をどう受け止めるだろう。笑いそうになるのを堪えながら、彼女の傍までやってくる。ドレスの背中から覗く白い肌が、今は艶めかしい。


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