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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第6章 狂宴-4

 その言動に怒りが込み上げてくるのを、私ははっきりと自覚した。やはり問題児の改悛は、この男が裏から手をまわしていたからなのね。覚悟はしていたつもりだけど、改めて本人の口から聞かされると、感情を律しきれず、思わず手を握りしめてしまう。
 「どうやら貴方は自分が何をしているかわかってないようね」
 冷静さを保とうとするが、つい険のある口調になってしまう。一体この男は自分の行いをどう受け止めているのだろう。会社ぐるみで麻薬の密貿易へ関与したのみならず、生徒に違法薬物を広めることで、自らの権力を確立しようなど言語道断も甚だしい。悪事を働いた者の末路を見れば、少しは溜飲が下がるかと思ったが、相手は一向に悪びれた様子もなく、不快感は増すばかりだった。 
 「紫織さん、あなたは誤解されていらっしゃる。私の行いは決して私利私欲の為でなく、日本の未来の為にやっていることです。そうでなければ、賛同者などいるはずがないでしょう」
 「そのような妄言に耳を貸すとお思いで?麻薬で手なずけた者を賛同者と呼ぶなど、恥知らずにも程がありますわ」
 「やはり貴方は大きな勘違いをなされているようだ。仕方ありません、こちらをご覧頂ければ‥」
 これ以上の問答は無用と判断し、彼の言葉を皆まで聞かず、連絡用の携帯電話を取り出した。後は警備班へ突入の指示を出せば、この男の顔を見ることは二度とないでしょう。だが、彼が懐から取り出したものを見て、今度は私が凍りつくこととなった。
 「これを‥、どうして貴方が!?」
 テーブルの上には、いましがた彼に渡した調査書の隣に、同じ調査書がもう一通置かれていた。見紛うことなき綾小路家の家紋が入った封筒に収められたそれは、昨夜理事長に渡したものに間違いない。しかし、どうしてこれがここに‥
 「‥つまりこういうことなのですよ」
 次の瞬間、私はテーブルに押し付けられていた。捻じりあげられた腕に鈍い痛みが走るが、それより突然の暴挙に及んだのが、女性ボディガードであることに驚きを隠せなかった。困惑する私の前で、男性ボディガードがとり落とした携帯電話を拾うと、実に落ち着いた口調で警備隊長と言葉を交わした。
 「私だ。‥ああ、パーティは予定通り開催された。これをもって今夜の警備訓練は終了とする。各自撤収にあたれ」
 その言葉の意味を考えながら、ようやく状況を把握しつつあったが、それでも信じられない気持ちでいっぱいだった。しかし、全く慌てた様子もなく薄笑いを浮かべている九条の姿は、その推測が正しいことを雄弁に物語っていた。
 つまり私は裏切られたのだ。他ならぬ鳳学院に。
 愕然とした思いで、私は事態が最悪の状況にあることを悟った。


 やったぞ、ついに紫織さんを俺の手に!
 歓喜が全身を駆け巡り、興奮のあまり震えが走る。思わず叫び出したい衝動に駆られるが、今は自重が必要だ。彼女の前で、みっともない姿をさらすわけにはいかない。


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