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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第6章 狂宴-19

 九条の言う通り、その男には見覚えがあった。去年の学期末、学内ネットに売春倶楽部の書き込みをした張本人であり、また先日の調査では、九条の共犯と目されていた人物の一人である。
 「そして校内の誰より早く売春倶楽部の存在に気付き、私の正体に迫った男です」
 驚く私の前で南雲は無言のまま跪き、九条は苦々しい笑いを浮かべていた。
 「傑作なことにこの男、副会長の桐生と密かに付き合っていたんですよ。だから私があの女に手を出した後、おかしいと思ったんでしょうな。見かけによらず優秀な男で、売春倶楽部のアジトを嗅ぎつけられてしまいましたよ。だが、その後が良くなかった。倶楽部の実態を外に広められては私も危なかったんですが、こいつは女を助けることを優先しましてな。結局教育を受け、今ではこき使ってやってるわけです」
 依然薬の及ぼす快楽の波と戦いながら、私は事態を理解しつつあった。つまりあの書き込みは真実のものであり、事情聴取を行った時、彼は既に洗脳されていたのね。そもそも私は根本的な勘違いをしていたのだ。学院で洗脳を企てていたのは九条とその共犯者ではなく、九条ただ一人だったのだ。
 「さて、これで秘密を知る者はいなくなりました。どうです、私のこの力に綾小路家の助力があれば、日本のみならず世界の頂点に立つことも夢ではありません。共に権力の頂点を極め、素晴らしい新世界を築き上げませんか」
 私はこの男を無知蒙昧な小物と評したが、今はその認識を改めていた。この男は狂人だ。少なくとも正気の人間が考えることではない。
 「‥こ、こんな恐ろしい力で人を操って、新世界ですって!」
 「ふふ、もしや貴方は教育を受けることが不幸なこととお考えではありませんか。とんでもありません、彼等にとって私に従うことは至上の悦びとなるのですよ」
 「人の尊厳を踏みにじり、玩具のように扱っておいて何を!」
 「そうはおっしゃいますが、大衆の多くは無能です。彼等はより優秀な者に使われてこそ、初めて価値が現れると言うものです。私が愚民に役目を与えることは彼等の為でもあるのですよ。もちろん彼等とて人間です。だからちゃんと楽しみを与えてやってるではありませんか」
 階下から聞こえてくる嬌声は、今や洗脳された者があげる悲鳴にしか聞こえない。私はこの男のあまりの傲慢さに底しれぬ憤りを覚えていた。確かに人を人と思わぬ輩はいるが、この男は違う。自分が神にでもなったと錯覚しているのだ。
 「それにしても、貴方は強情だ。なぜ快楽に身を委ねないのです?まだ足りないと言うのであれば仕方ありませんね。‥おい、南雲」
 九条の顔に広がるいやらしい笑みに、悪い予感が胸をつく。この上、何を企んでいるの。
 「その金髪女を犯せ。‥せいぜい派手によがらせてなぁ」
 「‥はい、九条様」
 絶望が目の前に闇を落とし、吐き気の様な気持ち悪さが胸に込み上げてくる。生徒会で庶務を務める男は、無表情のまま立ち上がり、テーブルの上で股を開いて待つ橘沙羅に近づいていった。
 「駄目っ、止めてぇ!」


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