投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

鳳学院の秘密の最初へ 鳳学院の秘密 87 鳳学院の秘密 89 鳳学院の秘密の最後へ

第5章 教育-9

 ところが、食堂まであと少しと言うところに来て、意外な人影を目にする。既に照明の落ちた文化棟に向かって、一人の女生徒が歩いていた。
 あれれ、インテリ眼鏡?
 ついさっきまで九条と一緒に食事を摂っていた副会長が、何でこんな所にいるんだろう。
 制服のままだし、忘れ物でもしたのかな。と考えるも、何か不審なものを感じたあたしは、いつの間にか後をつけていた。
 彼女は文化棟の入り口には向かわず、建物の裏手に回り込むように移動する。そのますます怪しい行動に、鞄からスパイグッズの一つ、暗視装置付き双眼鏡を取り出す。本来は夜行性動物の観察などを目的にトリクシスで開発された試作品だが、性能は軍事用と比べても遜色がない。父におねだりを繰り返して、ほとんど無理矢理手に入れた装備である。
 その双眼鏡のおかげで十分距離を置いて尾行することができ、インテリ眼鏡はあたしに気付いた様子もない。暗視装置特有の緑がかった視界越しに表情を覗き見るけど、相変わらずの仏頂面で、何を考えてるのかはわからない。
 いまだ生徒会役員達が九条の悪事とつながっているかは不明のままで、少なくとも盗聴してる間に、そのつながりを窺わせるものはなかったけど、今の彼女の行動は十分に怪しい。彼女はやがて文化棟の裏手、目的地らしいドアの前にたどり着く。
 金属製のドアが重い音を立てて閉まった後、あたしは直ちに駆けつける。スプリンクラー制御室?ドアに書かれた文字を見て、ますます不可解になる。こんな所に一体何の用があるんだろう。
 スペアとして持っていたコンクリートマイクを取り出し、壁にあてて直接中の音声を拾う。傍から見たら明らかに不審者だが、こんな時間に人がいるはずもない。はたして中からは、インテリ眼鏡の声も足音も聞こえず、代わりに何かモーター音らしきが聞こえてくる。一体何の音なの?
 そーっと、ドアを押し開け中の様子を窺ってみると、小さな常夜灯が照らす薄暗い室内は、天井に向かって何本ものパイプが走り、圧力計の付いたバルブが見える、文字通りスプリンクラーを制御するための小部屋だった。だが、隠れるところもない狭い部屋にもかかわらず、インテリ眼鏡の姿はなく、問題のモーター音は壁際の大きな配電盤の裏から聞こえてきた。
 「わぉっ!」
 配電盤を開いたあたしは、驚きとも感嘆ともつかぬ声を上げていた。普通ならブレーカーのスイッチが並んでいる制御盤があるはずなのに、どうみてもエレベーターのドアにしか見えないものが出てきたからだ。音がまだ続いているところを見ると、結構深いところまで降りてるみたい。インテリ眼鏡はこれに乗って、地下へ降りたのね。
 興奮で身体が震えてくるけど、あたしはできるだけ事態を冷静に判断しようとした。言うまでもないが、普通のスプリンクラー制御室にエレベーターなんてあるはずないし、そもそも文化棟に地下があること自体聞いたこともない。明らかにこれは、一般の生徒には秘密の場所。売春組織のアジトに直結してるはずだわ。
 さぁ、ここが分岐点よ。この場所をしおりんに報告すれば、後は綾小路家が事態の収拾を図ってくれるはずよね。九条の悪事を暴くにはそれで十分だし、危険なことは何もない。それとも、このアジトに潜入して、売春組織の実態を写真に収めてみる?もちろん危険を伴うけど、しおりんに報告するのはそれからでも遅くないでしょ?


鳳学院の秘密の最初へ 鳳学院の秘密 87 鳳学院の秘密 89 鳳学院の秘密の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前