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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第5章 教育-25

 「当初彼の研究は、人間の脳の眠っている部分を活性化させ、優秀な兵士を作りあげることにあった。何しろ某国は、経済的にも軍事的にも、列国から取り残されつつあったからな。国家機密と言う壁の向こうで倫理とか人権と言ったものは無視され、人体実験を含む非合法な研究も進められていたらしい」
 何やら気分の悪くなる話だが、それにもまして落ち着かないのは、二人が媚態をとり始めたことだ。瀬里奈は耳元で何事か囁かれると、男の膝に跨り乗り、熟れた果実のような胸を大胆に押し付け始める。紫苑もまた、男の手をスカートの中に導くと、その腕を抱え込むように抱きつく。今やすっかり九条に操られてしまった友人達を元に戻すには、どうすればいいのだろう。気ばかり焦って、集中力がなくなっていく。
 「しかし実験が進むにつれ、彼の研究は方向性を変えていった。彼は脳がある種の条件下において、外的要因によって制御する事が可能であることを発見したのだ。当時の彼は歓喜に震えたらしいぞ。何しろこの研究が完成すれば、感情や恐怖に左右されず、命令を百パーセント遂行する完璧な兵士を作ることができるだけでなく、敵国の兵士を自国に寝返らせることも可能だからな」
 「ひゃん!」
 びくん、と身を震わせ、驚いた様な悲鳴を洩らしたのは紫苑だった。スカートの中で九条の手が蠢き、そのたびに彼女は身をくねらせる。日頃の清楚な物腰からは想像もつかない淫猥な仕草に、喉がひりつく様な息苦しさを覚える。
 「だが、世界情勢の変化で某国にも軍縮の波が押し寄せてきた。そこで特に研究費のかさむ彼の研究は中間報告を求められたのだが、新たな発見はまだ検証が不十分で、軍上層部が満足する結果を出すには至らなかったようだ。結果、そうでなくても非合法な部分が多く、もし表沙汰になれば国際的に糾弾されかねない事もあって、研究は打ち切られることとなった。当然、それに納得できなかった彼は、密かに亡命を企てた。自らの研究を完成させるためにな」
 「その科学者が、あれを作ったと言うの?」
 「まぁ、先を焦るな。ところで、九条家は代々天才の家系でな。どんな遺伝子の悪戯か知らねえが、何世代かに一度、理化学系の天才を輩出することがある。明治以降で言えば、俺の五代前にあたる九条嘉徳侯爵が医学分野での才能を開花し、今の九条コーポレーションの基礎を築き上げたわけだ。もっともそれ以降の九条家嫡子は凡才の限りで、先祖の財産を食いつぶす一方でな。数代ぶりに現れた俺と言う天才は、破綻寸前の我が社にとって救世主の出現に他ならなかったのさ」 
 あたしは九条の口調に微妙な変化が現れるのを聞き逃さなかった。どこか自嘲めいた言い方には、今の境遇に満足してない様子が窺える。それにしても、こいつは一体何が言いたいのだろう。どこかの国の科学者と、九条家に何か因果関係があることを説明したいのだろうか。
 「まったく笑わせてくれるぜ、うちの爺や親父共は、自分達が破綻に追い込んだ会社を救うため、中学にあがったばかりの俺に薬の開発を始めさせたんだぜ。だが、俺は才能を余すところなく発揮し、幾つかの新薬の基礎開発に成功した。まだ臨床試験が済んでないから認可も降りてないが、近いうちに俺の作った新薬が医薬業界に新風を巻き起こすだろう。もっとも俺の望みは名声や経済的成功なんかではない。彼の研究を目にしたのは、そんな折だ」


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