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冬桜
【SM 官能小説】

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(第一章)-7

「谷 舞子さん…いや、もしかしたら燿華さんと呼んだほうがいいのかもしれませんね…」
突然、彼が囁いた自分の名前に、私は戸惑いを隠せないまま、じっと彼の顔を見つめた。

「かつてSMクラブの売れっ子女王様…。今でも大変魅力的だと思います…」
私は男のくすぐるような視線を無視するようにワイングラスに唇を寄せる。

「ぼくは、ノガミタツヤ…ぼくの父とつき合っているようですね…」
その言葉に、私の頬が一瞬強ばり、彼の顔に強い視線を注ぐ。
「驚いたようですね。いや…別にそんなことはどうでもいいのです。父がどんな女性と、どん
なつき合いをしようとぼくには関係がない。ただ、父がどういう女性とつき合っているのか
興味があったのです。偶然、父とあなたがホテルに入っていくのを見かけた。そして、ぼくは
あなたが以前SMクラブの女であることを知りました。ぼくはあなたに興味を抱き、あなたに
会いたいと思い、ここで偶然出会うことができた…ただ、それだけのことです…」

微かな動揺を封じ込めるように私は壁の写真にふたたび視線を向ける。

「あの写真の中の男性に、あなたはエロスを感じ取ろうとしている…。そんなあなたをぼくは
好きになりそうです…」

その言葉に不意に振り向いた私の手の甲に、タツヤは乾いた指を這わせる。彼の指の感触に、
私のからだの中がうっすらとした微熱を含み始めていた。私は手の甲に這う彼の指を軽く押し
のけ、ワイングラスを手にする。

「かつて、あなたの足元に跪かせ、あなたが鞭を振り下ろした父の肉体…。そんな父に抱かれ
ているあなたの欺瞞…」

まるで私自身を見透かされたような彼の冷ややかな言葉だった。私の肉襞の奥に忘れ去ったも
のが淫猥な顔をのぞかせ、湿り始めた陰毛が毟られ、散っていく淫靡な疼きがじわりと湧く。


タツヤの物憂い視線が私のからだにねっとりと纏わりついてくる。胸の谷間をなぞり、腰に
絡みつき、ハイヒールの爪先から足首に這いながら、ストッキングに包まれた太腿の表面を
ゆっくりと撫で上げる。微熱を含んだ彼の視線は、やがて揺らぐようにスカートの中に潜み、
腿の内側を這い、太腿の付け根へと生あたたかく伸びていく。

彼の瞳の光は、まるで身震いするような甘美な官能に溢れていた。吸いつくような彼の視線が、
薄い霞のかかった私の花芯の中空をくすぐり、膣穴の奥に瑞々しい息吹を芽生えさせるようだ
った。私は、自分のからだに注がれる彼の視線を振り払うように脚を組みなおした。

「今すぐにでも、ぼくはあなたの足元に跪き、あなたのその美しい足首に接吻することさえで
きる…」
「やめて…やめてくれないかしら…」
「明日の夜、あなたは父に抱かれるかもしれない。父とセックスを交わしながらも、きっとあ
なたはぼくを受け入れることになる…」

耳朶を噛むような彼の囁きに、私の中の欲情が波を含んだ海面に浮かぶ笹舟のようにゆらぎ
始める。ふたたびさざ波が打ち寄せ始めた肉襞から蜜が流れ出し、今にも未知の海へと拡がっ
ていくような気がした。

「もう一度、鞭を手にしてみませんか…あの頃のあなたに戻って。相手は、ぼくでよかったら
…」

彼の眼光が、沈黙する私の肉奥から蜜のしずくを掬いあげたような気がした。その蜜汁は彼に
導かれるように肉の合わせ目から溢れ、やがて私の腿の内側を細い糸筋となって流れていくの
だった…。


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