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冬桜
【SM 官能小説】

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(第二章)-1

「珍しいな…舞子の方から私を誘うなんて…」
そう言いながら、黒いブリーフだけを纏ったノガミは、煙草に火をつけながらベッドの縁に腰
をおろす。

高層ホテルの部屋の淡い灯りが、ノガミのからだを妖艶に包み込んでいる。彫の深い顔立ちを
した彼の瞳の中には、いつものようにつかみどころのない光が澱んでいた。

ノガミはすでに五十歳半ばの年齢を迎えているというのに、胸肉から太腿に続く胴体全体は、
粗野でありながらも引き締まり、なめらかな筋肉の隆起を露呈した肉肌には、蒼い光沢を滲ま
せている。そしてベールのようなブリーフの膨らみが、彼のペニスの気だるい陰翳を形取って
いた。

「からだが寂しいときってあるじゃない…」と、私は彼に背を向け、わざと素っ気なく言いな
がらホテルの大きな窓の外に目を向ける。瞬く街の夜景に思わず吸い込まれそうになりながら
も、氷の結晶のような光の群れは、これからノガミに抱かれようとする私の欺瞞を見透かした
ように肌にまとわりつく。

黒いシルクのスリップ姿の私の背中に彼の渇いた視線が注がれる。その視線に、私は微かな
恥じらいと微かな動悸をからだの中に感じる。その理由はわかっていた…。私はノガミの前に
からだを晒そうとしているのに、私のからだは確かにタツヤを意識していたのだ。


立ち上がったノガミが背後から私を抱きよせ、首筋に唇を触れながら不意に囁いた。

「今夜の舞子は、何か違うような気がする…」

私はその言葉を遮るように咽喉を小さくのけ反らせる。窓ガラスには淡いオレンジ色の灯りに
包まれたふたりの姿がぼんやりと映っている。私の背後から乳房の谷間に這ってくる彼の指は
やがて、湿った掌となり、腰の線をゆるやかになぞっていく。

スリップの肩紐がずり落ち、波うつような片方の乳房が剥き出しにされる。乳房をまさぐる彼
の掌の微熱がほんのりと肌に伝わってくる。不意に毟り取られたスリップとショーツがはらり
と床に落ちる。そのときなぜか目の前の鏡の中にタツヤの視線を感じた。私のからだの中の
時間が止まり、花心の蕾が爛れるように溶け始め、甘美な旋律を今にも奏でようとしていた。


ガラスに映った私の裸体…。四十歳を過ぎた私の裸には、以前のような肌の輝きがいつのまに
か影を潜め、喘ぐような肉欲だけが滲み出しているようだった。ねっとりとした脂肪を孕んだ
白い乳房の先端で、ひとりでに疼き始めた乳首だけが悩ましくそそり立っている。乳輪の縁と
乳首の先端をノガミの指でなぞられるほどに、私の褪せた蕾はち切れんばかりに丸みを帯び堅
くなってくる。

彼は、かすかに肉がついた私の下腹を撫でさすり、白い腿の付け根の繊毛の毛先を掌で優しく
包み込むように撫でる。いつもより早く湿った私の陰毛を彼はどう感じたのだろうか…。心と
かけ離れたところで粘りを増していく欲情が、私の心を嘲笑いながら襞をゆるませ、濛々と
拡散した光を膣穴にまぶしていく。

肌を撫であげるノガミの指に、私はタツヤの指を想い描きながら息苦しくなるような淫蕩に
身を捩った。私は脳裏に浮遊してくるタツヤの像を遠ざけながらも、ノガミとのあいだに漂う
希薄な空気のなかに、確かにタツヤという男を強く感じ取ろうとしていたのだ。


ゆるやかにベッドに押し倒される…。


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