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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第3章 調査-19

 あの生きている身体から鮮血が飛び散る美しさ、死にゆく者が見せる、狂おしいまでの生への執着‥
 瑞々しい紅の血が宙を舞い、どんな艶やかな華も及ばぬ美を生み出す刹那の刻。華道の深奥に至る美の境地を、どうして余人には理解してもらえないのでしょう。特に「キモチワルイ」とか「シンジラレナイ」なんて言葉で片付けてしまう瀬里奈さんが、私には理解できません。
 いけませんわ、今はこんなことを考えている場合ではありません。沙羅さん達は見当違いにも綾小路さんを疑っているようですが、この情報をもとに秘密のスタジオを発見できれば‥
 コンッ、コンッー
 突然のノックに飛び上がらん程の驚きを覚え、危うく出かかった悲鳴をなんとか飲み込みました。反射的に画面を別のものに切り替えますが、動悸が収まりません。一体誰でしょう。沙羅さんや瀬里奈さんなら、部室に入るのにいちいちノックなんてしませんし、こんな放課後遅い時間に報道部に来る者などいないはず。
 まさか、売春組織の方がDVDのことを嗅ぎつけ、早くも口封じに来たのでは。そう言えば、先ほど瀬里奈さんが帰った後、うかつにも鍵を閉め忘れましたわ。
 再びノックがされるも、恐怖に凍りついた私は身動き一つできずにいました。するとドアのノブが回され、扉がゆっくり開き、そして‥
 「まぁ、まだ残っていたの?」
 ‥現れた桜井先生の姿を見て、私は肩から力が抜けるのを覚えました。
 危うく椅子からくずおれそうになるのをこらえ、不自然に見えないよう、さもパソコンで作業していたかのように取り繕います。おそらく閉校時間前の見回りに来たのでしょう。それにしても驚かせてくれます、本当に心臓が止まるかと思いましたわ。
 「頑張ってるようだけど、もう下校時間よ。そろそろ部屋に戻りなさい」
 「申し訳ありません、記事がはかどっていたので、思わず熱中してしまいましたわ」
 いつの間にそんな時間がたっていたのでしょう。でも安心したからか、私はちょっと饒舌になり、余計なことを言ってしまったようです。部屋を去りかけた先生は、思いなおしたかのように、再び部室に戻ってきます。
 「そう言えば最近、あまり部活動の様子を見てないわね。どう、新聞記事はもう出来上がったかしら?」
 報道部に限らず、文化部の顧問は実質名前だけの存在。定期的な活動報告を確認する他は、大概生徒の自由にさせてくれるのが通例で、時々活動内容を見学に来るのがいいところです。桜井先生は新任と言うこともあって、同好会立ち上げ当時はよく見学に来られたのですが、最近は他の部活動の顧問も兼任され、ご無沙汰だったと言うのが実情です。
 いざと言う時のダミー画面として用意しておいたのが、作成中の新聞記事の画像だったのは不幸中の幸い。先生は作りかけの記事を見て、感心したように頷きます。でも、ツールバーには「調査物件1」とタイトルづけられた問題の映像が格納されており、先生がそれに気付くのではないかと、冷や冷やしながら見守っています。


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