赤木智紀-7
「あのさ、さっきぶつかった時に、オレのスマホと本多のスマホが入れ換わったみたいなんだ」
『えっ?』
予想もしなかったことに、なっちゃんは吃驚している。
「本多が今持ってるのスマホはオレのなんだよ。で、オレのが本多のやつ」
『ウソ―――!』
「ほ、本多、聞いてる?明日交換して欲しいんだけど、少し早めに学校に来れる?」
やっぱり告白は電話では無くて、面と向かってしたい。明日、スマホを交換する時に告白しようと思い、朝一番に約束を取りつけたかった。
『えっ…』
要件は伝えた。
「い、いいな、じゃあ明日な」
心に余裕の無いオレは、戸惑うなっちゃんに、念を押して早々に電話を切ろうと思った。
『待って!』
なっちゃんがオレを引き止めたのでドキッとした。
「ど、どうした」
『智くんお願い、スマホの中は絶対に見ないで』
うっ。
なっちゃんは気づいてないけど、今オレのことを『智くん』って呼んでくれた。オレは喜んだがそれも一瞬だった。
こんな場合は適当に『見てないよ』って誤魔化せばいいんだろうけど、そんな器用さはオレにない。
しばらく固まったオレは、スマホの中の画像を勝手に見たことを正直に謝ることにした。
「ご、ごめん…」
『………………』
「ほ、本多?」
オレの謝罪の言葉を聞いたなっちゃんは、イキナリ電話を切ってしまったようだ。
オレは耳からスマホを離し、通話の切れた画面をしばらく呆けて見つめていた。しばらくして一気に後悔の念が湧きあがってきた。
「ううっ、どうしよう、どうしよう」
怒らせてしまった…。
「うわあああ、もうダメだあああ」
オレはベッドに倒れ込むと、枕に顔を押し付けて頭を抱えた。初めて言葉を交わしたのにこれだ。どうしてドラマみたいにスマートにいかないんだろ。
「智紀〜、ご飯よ〜、早く降りてきなさ〜い」
スマートさが無いことを裏付けるかのように、母親の間延びした声が階下から聞こえてきた。
母よ、オレは今それどころじゃねー!