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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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垣間見える過去-10

巨峰サワーのおかわりはなかなか持って来てくれなかった。


おかわりを待つまでの間に、もう一本煙草をくわえて火を点ける。


そうでもしないと、自分の中のよくわからない感情の整理がつかないからだ。


でも久留米さんに相談して、ハッキリと現状に直視したあたしは、朧気ながらも答えが見えてきた気がした。


「あー、塁があたしに対して気持ちがないなら、このままスッパリ関係を断ち切って諦めた方がいいのかなあ」


「そうした方がいいってハッキリ言ってあげたいけど、言って諦められるならとっくにそうしてるもんな。

諦めたくても諦められないって気持ちもよくわかるから」


独り言のように呟いたあたしに向かって、久留米さんは小さくため息を吐いてそう答えた。


でもそれはあたしに向けて、というよりも、むしろ自分に対して言い放った独り言のように聞こえた。


彼は、心ここにあらずと言った感じで空になったあたしのジョッキを見つめていた。


カラン、と小さくなった氷がジョッキの中で音を立てる。


そんな沈黙に、あたしは一つの懸念を持ち、彼に恐る恐る訊ねてみる。


「久留米さんも、その本命さんのこと、今でも諦められないとか?」


すると彼はあたしの顔も見ないままに、


「……かもな」


とだけ呟いた。






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