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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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垣間見える過去-9

「でもさ、そんなこと繰り返してたある日、本命に言われたんだよ。

“彼女がいながらも他に好きな娘がいるなんて、ずいぶん気が多いんだね”なんて、すげえ冷めた顔でイヤミ言われてさ。

ずっとそんな風に思われていたんだって考えたらショックでさ、あとはそれっきりそういう真似は止めたんだけど」


普段の真面目な仕事ぶりから、勝手に久留米さんは誠実な人ってイメージがあっただけに若干ショックを受けてしまった。


でも、本命に対しては一途だったんだと思うとなぜか胸の奥がチリッと痛んだ。


やきもち? いや、違う。
あたしは塁が好きなはずなんだ。


でも、久留米さんにもあたしの知らない世界がやっぱりあったことが悔しいと思ったのも事実で。


あたしは自分で自分がわからなくなってきて、グシャグシャになりつつある気持ちを飲み込むように、少なくなった巨峰サワーを一気に飲み干してから、料理をせわしなく運んでいるおばちゃん店員に、


「巨峰サワーおかわり下さい」


と言った。


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