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Twin's Story 外伝「Hot Chocolate Time 2」〜男の矜持タイム
【OL/お姉さん 官能小説】

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秋月の矜持-2

 オレンジ色の液体が入ったグラスが運ばれてきた。
「僕ね、」秋月が両手で顎を支えたポーズで夏輝に目を向けた。「貴女のこと、とっても買ってるんです」
「買ってる?」
「実戦実習が始まってすぐ、交番に来た迷子の子どもの扱い、もうベテラン並みに素晴らしかった」
「そ、そんな……」夏輝は顔を赤らめた。
「それに、明らかに認知症の疑いのあるお年寄り、ふらりと交番にやって来たことがあったでしょう? あの時も、あなたの対応には目を見張るものがありました。これはお世辞じゃありません」
「ありがとうございます。でも、そ、そんなに褒められた人間じゃありません、あたし……」
「何より接し方が温かい。子どもだろうとお年寄りだろうと、相手が感じている、欲している状況を、貴女は作り出すことができていた。僕は貴女のそういう対応を間近に見て、頭を警棒で殴られたようなショックを受けました。自分は今まで何をやってたんだ、実習の指導員として失格だ、って」
「あたし……」
「ちゃんと実戦実習記録表に書いて報告しときましたから」秋月はぱちんとウィンクをした。
「あ、ありがとうございます……」

 秋月はテーブルのグラスを見つめながら独り言のように呟いた。「僕は、その時思ったんです。警察官である僕は、今まで自分の独りよがりな立場にしか立っていなかった。それに権力をバックに偉そうにしていた。本当は、今目の前にいて困ってる相手が、どんな気持ちでいるかってことを思いやらなければならなかったのに……。警察官って、貴女がやって見せてくれたように、人を安心させる仕事なのにね。……だから彼女にも嫌われる」
 夏輝は少し焦って言った。「秋月さんは、今でも十分それができてると、あたしは思います。相手のことを思いやって、安心させてくれる……」
「まだまだ修行が足りませんよ」秋月ははにかんだように笑った。

 秋月はグラスの表面についた水滴をおしぼりで軽く拭った後、それを手に取った。「そうそう」
「え?」夏輝が顔を上げた。
「いつか言おうと思ってた。貴女のその髪、素敵ですよね」
「えっ?」夏輝は意表を突かれて固まった。
「ソフトな感じで親近感がありますよ、すごく」
「で、でも、茶髪なんて、警察官にあるまじきスタイルだって思いません……か?」
「全然。貴女のその栗色の瞳ととってもよくマッチしてて、僕は好きだな。それにポニーテールも健康的だし」



 秋月が白い歯を見せて笑った。
 夏輝の鼓動が速くなってきた。

「秋月さんって、人の心が読めるんですね……」
 ウーロン茶のグラスをテーブルに置いて、秋月は少し首をかしげた。「え?」
「仰る通りこの髪の色は自分の目の色に合わせているんです。でも、それがわかっちゃうなんて……すごいです秋月さん」
「たまたま気づいただけですよ。」
「さすが警察官、って思います」
 グラスに手をかけたまま、秋月は照れたようにうつむき加減で言った。「僕がそうかどうかは別として、警察官に必要な能力かも知れませんね、そういう洞察力、というか、想像力みたいなものって」
「そうですよね」
「それに、貴女のように自分のことをちゃんとわかる、っていう能力も」
「え? わかる?」
「そう。自分のことがわかっていない人間が、人に命令したり、指示したりできるわけがありません。自分はこうだ、という信念を持っていて初めて、人と正面切って相対することができる。僕はそう思いますよ」

 秋月はまたにっこりと笑って夏輝の目に温かいまなざしを向けた。「警察官ならなおさらね」

 夏輝も秋月の目をじっと見つめた。
 秋月はほんの少したじろいだように瞳を揺らめかせた。

「あたし、秋月さんといると、とっても癒されます。なんだか、ほっとする、っていうか……」
「ほんとに? それは光栄だな。」
「みんな仰るんじゃありませんか? そんな風に」
「女の人からそんなこと言われたのは初めてですよ」
「嬉しい。あたしが初めて秋月さんの本質を見抜いたってことですね」
 夏輝は赤い顔をして笑った。

「日向さん、少し酔ったみたいですね?」
 夏輝は自分の頬に手を当てた。
「なんか、ほわんとしていい気持ちです」
「お酒、初めてなんでしょう? それぐらいにしといた方がいいんじゃないかな」

「秋月さん」夏輝はまた秋月の目を見つめた。
「……」秋月は返事もせずまたウーロン茶のグラスを手に取った。
「こうやって、女性と二人で食事するって、どんな気持ちですか?」
「楽しいですよ、そりゃあ」秋月は微笑んだ。
「でも、たとえ女の人でも、こいつとはだけは二人きりでいたくない、って思う相手もいるんじゃないですか?」
「何ですか? それ」秋月は呆れたように夏輝を見た。
「あたし……、秋月さんにそう思われているんじゃないか、って……」夏輝はうつむいた。


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