投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

Twin's Story 外伝「Hot Chocolate Time 2」〜男の矜持タイム
【OL/お姉さん 官能小説】

Twin's Story 外伝「Hot Chocolate Time 2」〜男の矜持タイムの最初へ Twin's Story 外伝「Hot Chocolate Time 2」〜男の矜持タイム 2 Twin's Story 外伝「Hot Chocolate Time 2」〜男の矜持タイム 4 Twin's Story 外伝「Hot Chocolate Time 2」〜男の矜持タイムの最後へ

実戦実習-3

 二人はパトカーに乗り込んだ。秋月はエンジンを掛け、窓を全開にした。「こもった熱気が出るまで、窓開けときます。二、三分経ったらエアコン入れますね」
「あたし、そのままでもいいです」
「え?どうして?」
「風が好きなんです。実家のアパートのあたしの部屋にもクーラーついてないし。暑さには慣れてます」
「そうなんだ。若いのになかなかストイックですね」

 秋月はルームミラーと後方を確認した後、ゆっくりとパトカーを発進させた。
「それに、何かあった時、窓開けてた方が見つけやすいし、声も掛けやすいでしょ」
「まあ、貴女の言うとおりですけどね。ただ、暴力団のいる地域や暴動の現場では窓は開けない。危険だから」
「そうか……その通りですね」夏輝は感心したように秋月の横顔を見た。


 秋月の運転するパトカーは、信号のある交差点を左折し、広い国道に出た。

「ところで、日向巡査は、どうして警察官になろうって思ったんですか?」

 少し時間を置いた後、夏輝はゆっくりと口を開いた。
「……あたしの父は、交通事故で亡くなったんです」そして彼女はうつむいた。
 秋月は慌てたように言った。「え? あ、ご、ごめんなさい、辛いこと思い出させてしまって……」



 夏輝は顔を上げた。「いいんです。気にしないでください。」
「そう……だったんですか……」
「だから警察官になりたいっていう気持ちは、中学生の頃から持ってました」
「……えらいですね」
「あたしを一人で育ててくれている母を見てたら、自然とそんな気持ちに……」
「本当にえらいな、貴女は。ちゃんと信念を持ってるんだ」
「そんな大層なものじゃありませんけど……」夏輝は少し頬を赤らめた。「秋月巡査長は?」
「僕ですか? うーん……、貴女のようにしっかりした信念を持ってたわけじゃないんですけど、きっかけと言えば、高校の時からつき合ってた彼女が痴漢に遭って、でも一緒に電車に乗ってた僕はそれに気付かなかった」
「え? そんなことが?」
「はい。で、その後泣きじゃくる彼女に僕はどうしたの? としか声を掛けられなかった。結局それが原因で彼女とは気まずくなって別れちゃいましたけどね。」秋月は笑った。
「け、けんかしちゃったんですか?」
「うん。何があったのかなかなか話してくれなかったから、僕が『早く言えよ』って言ったら、『あたしがイヤな思いをしているのに、なんで気づかないの?』って返されて、それでまたムッときて『気づかれないように触るのが痴漢のやり方だろ』って言ったら、『彼氏なのにそのぐらいも気づいてくれないの?』って言われたんで、『そんなことするためにつき合ってるんじゃない』って言い返して……。それからどんどん二人とも熱くなって、街の往来の真ん中で口論になっちゃって。……笑えるでしょ?」
「そ、それが貴男の警察官になろうって思った動機なんですか?」
「動機というよりきっかけですね。どこかに彼女を見返してやろうっていう気持ちはあったかも知れません」
「そうですか……」
「でも、彼氏である自分が彼女を守ってやれなかった悔しさ、というか歯がゆさかな、やっぱり。動機と言われればそれが一番大きいかも」
 秋月は遠い目をして少し寂しげに微笑んだ。

「あの……」夏輝は恐る恐る訊いた。「その彼女とは、それっきり?」
「僕にはまだ未練があります。時々電話したりもするし」

 夏輝は意外そうな顔で秋月を見た。彼はにこにこ微笑んでいる。

 少し安心して夏輝は言った。
「それって、別れたってことになってないんじゃないですか?」
「そうかもね。でも彼女の気持ちはどうなのかな……」
「もう立派に警察官になってるわけでしょ? 秋月さん。まだその人のことが好きなら、もう一度ちゃんと言ってみたらどうですか?」
「またつき合ってくれって?」
「はい」

「…………」秋月はちょっと難しい顔になってハンドルを握ったまま前を向いて黙り込んだ。
 夏輝は慌てて言った。「あ、ご、ごめんなさい。あたし差し出がましいことを……」
「あ、いえいえ、ごめんなさい。こっちこそ貴女に気を遣わせてしまいましたね。いや、貴女の言うことももっともだな、って考え直してたところです、今」
 秋月は夏輝を見て笑った。

 夏輝はほっとしたように言った。「お優しいんですね、秋月巡査長……」
 秋月は視線を前に戻して、照れたように頭を掻いた。


Twin's Story 外伝「Hot Chocolate Time 2」〜男の矜持タイムの最初へ Twin's Story 外伝「Hot Chocolate Time 2」〜男の矜持タイム 2 Twin's Story 外伝「Hot Chocolate Time 2」〜男の矜持タイム 4 Twin's Story 外伝「Hot Chocolate Time 2」〜男の矜持タイムの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前