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貴方を、護りたい・・
【純愛 恋愛小説】

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彼の笑顔-1

「うー寒っ!」

新年の風が彼女の体を包み込み、頬や耳元が赤く染まっていく・・
そんな彼女の状況にも関わらず無邪気に吹き踊る自身の長い金髪
小刻みに身体を震わせ腕を両手の甲で抑え、閑静な住宅街の下
一人ある目的地へと足を運んでゆく・・

「・・・・っ」

ずっと休む事無く動かしてきたその足を休め、ある一軒家に目が留まり
そこは彼女が今まで目にした一軒家と何の変わりは無かった・・
ただその家に刻まれている『佐藤』と言う家札が彼女にとって
特別な意味を抱く・・と言う事実を除いては・・

「母さん、しゅう・・」


「ほほう、彼は肉全般にサッカー観戦がお好きな訳ね?」
活き活きとメモを走らす樹里奈
「そうっ東京の国立競技場で近々彼の大好きなチームの出場する試合が開催されるとか」
信号が赤へ点灯し下校するその足を止め、会話を続ける

「チケット、手に入るカナ?・・」
「まぁー、けっこう人気のあるチームらしいの・・、ダ・カ・ラァ」
「早いモン勝ちって訳ね」
それから、そのチケットの値段を尋ねるもソコまでじゃ分からない見たく
力になれなくて謝ると

「いや、良いのよここまで分かれば十分!流石幼馴染なダケあるねっ!」
「そんなぁ、ちょっと小学校クラスが一緒だったってダケでぇ」

信号が青に変わり足を再び動かすし、何でそんな事を聞くのか訪ねるも
軽くはぐらかされ、いつもの分かれ道へ着き、春華に別れを告げ、自宅へと急ぐ
その世話しない背中が夕日と共に小さくなって行く友の姿を延々と見続ける春華

「・・樹里奈」


「んんー、ったくおっせぇーなぁっこの糞パソコンがぁっ!!」
自宅に戻り慣れないパソコンを起動するも
目的のページが中々画面から姿を現さず長時間とも思える時間が流れてる様な感じで
悪戯に憎たらしく、人をからかうかの如く回転する砂時計のマークをただ苛々と
振り回し続ける樹里奈

「おーいっまだ使い終わらないのかぁ?」
蓮見家にただ一台しか無いパソコン・・ゆえに早く使い終えて欲しい父

「だからちょっと待ってってばぁ!仕方無いでしょ?このパソコンおっそいんだもん!」
今だ回転し続ける砂時計を睨み付け、そしてついに堪忍の尾が切れ

「あーたたたたたたぁ、ほぉわちゃあっ!早せんかぃボケェ!」
遅すぎるページをあちこちクリックしまくりそのせいで・・

「はぁ?何よコレ!」
ページがグチャグチャになり、そんなページを消し去ろうと強制終了しようとボタンを指に近づけ様とすると

「おいおいっ!何してんだぁ?」
見るに見兼ねた父が手馴れた手つきで滅茶苦茶になったページを整え

「だって、パソコン何てあんまりしないから慣れて無いんだもーん、テヘッ」

カチッ・・カチカチ
静寂な居間に静かに響き渡る父のクリックする音

「・・だったらやらなきゃ良いんじゃないっ?俺、今日中に企画書を作成
しなきゃならねぇーってのに」
「ゴメン、ちょっとどーしても調べたい事があるから・・」
冷静を取り戻し、キーボードに視線を落としてると

「おっ、治ったぞ!」
そうこうしてる内に目的のホームページが表示され、顔を挙げる

「わぁー、有難う」
ホッとし、早速マウスに手が伸び画面と睨めっこをし

一安心した父が何気なくその画面に目をやると・・
「国立競技場?ゴンサローゼ札幌?」

娘の閲覧してる予想外のページに思わず首を傾げ
「おめー、サッカー何て興味あったっけ?」

その言葉を耳にし、パソコンを覗き見されてる事に気づき
「ヤダッ!ちょっと見ないでよ変態っ!」
「なーにがっ、せめてスケベって言えよ、おめーサッカー部のマネージャーにでも
なるのか?」

父の質問に困惑し、更に
「それとも何か他に理由でも?」
しつこく言い寄る父を振り払うかの如く

「もぅー良いじゃないっ!人が何を見ようとっ!」
「・・・!」

「お風呂沸いたからどっちか先にはいっちゃってぇーっ!」
助け舟が来たかの様に向こうから聞こえる母の声に応え、風呂場へ足を運ぶ父・・
「風呂、あがる頃には終われよ・・」
と注意し風呂場へと向かう父

誰も居ない居間で一人、クリックの音を鳴らし続ける樹里奈
「良かったぁ!まだチケット・・在るようねぇ!」
上機嫌に次々とページを開く樹里奈
「・・ふーん、A席中学生は4,000円かぁ・・うーん」
「そうでなくても東京だから・・電車代とか考えるとけっこう掛かるのよねぇー」
そしてふいに、パソコンを付けたまま自室へ階段をバタバタさせ・・

ジャラララララァ
机に自分の財布から無想作に小銭をぶちまけて、指で小銭を数える
「・・うーん、ギリギリかなぁ・・」
ごく普通の中学生の小遣いじゃ厳しい、国立競技場でのサッカー観戦の権利
「困ったなぁー、これじゃー彼を・・」
瞳を閉じ、溜息を吐き腕を組み眉をくねらせ悩んでいると

「おーいっ、パソコン終わったのかぁー?」
下からもう風呂からあがった父の苛付いた声が響き、結局問題解決出来ないまま父に謝りつつもう消しても良いよ!、返答し

「・・はぁ」


「そっかぁー、足りないのかぁーそりゃそうよねー」
ホームルーム前の朝の教室で話をする樹里奈と春華

「私の小遣いでチケットは買えても東京までの往復を考えるとちょっと厳しいというか」
「なら親に貸して貰ったら?彼を競技場に連れて行きたいのっ!・・って」

「・・私、あんましそういう事したく無いの、お金を貸し借りって・・人間関係が崩壊 する一番の理由じゃない?」
「借金とか賭け事とか昔から嫌いだもんねアンタ、・・じゃーどうすんのサ?
背に腹は返せませんよ?」
「・・そりゃー、まぁそうかも知れないけど・・」




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