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孤愁
【その他 官能小説】

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孤愁-12

(4)


 理恵は有村を仰向けにして早々に跨ってきた。まだ愛撫の交歓もない。
「もう、待ち切れなかった」
言いながらペニスを掴み挿入を始めた。
「入る?」
「びしょびしょよ」
「若いね」
「まだまだ現役。有村くんだって若いよ」
硬さを確かめるように根元をつまんだ。

 腰が沈んでいき、柔らかな圧迫とともに理恵の内肉に包まれた。
「うーん……」
重なった彼女の鼻息が頬にかかる。
「入っちゃった……」
一度、二度、腰を振るように動かして納まりをたしかめて軽く締めた。有村の手が尻の谷間に回ると、
「まだだめ。このままお話。入ってる感じを味わいたいの。じっとしてて」
うっすらと頬が薄紅色に染まっている。

「あなたの体温が中から伝わってくるわ」
「俺も温かい」
「伝え合ってるのね」
「理恵、気持ちいいよ」
「あたしも……」
「中だけ少し動くよ」
「感じてるから……」
器と器がきっちり組み合わさった実感が感じられる。
「もっと早くこうなってたらよかったかもね」
「今だから、いいんじゃないか」
「そうだね……」
温かい。……理恵の体温は高いのか……。ふと、思った。


 一昨日美貴を抱いたばかりなのにこれほど漲っている。だからこそ、なのか。それに、
(今日は妻がいない……)
泊まりがけで高校の同窓会に出かけている。気持ちの解放感も一因ではあったろう。そして明日は休日だ。しかしそれだけではないように思う。
(理恵といるとほっとする……)

 携帯にかけると今度の土曜日は店は休みだという。
「よかったら、家に来ない?」
「孫が遊びに来るんじゃないの?」
「来ないわよ。来たっていいし」

 夕方訪れると夕食と酒の支度が整っていた。
「お風呂沸いてるけど、あとにする?」
頷くと、
「今日、泊まれるんでしょ?」
「うん……どうしてわかる?」
有村に背を向けて理恵は冷蔵庫を開けた。
「だって、わざわざ電話くれるんだもの。それに……」
ビールの栓を抜き、コップに泡が盛り上がった。
「なんだかそんな気がした。声の感じで」
声の感じとはどんなものなのか、訊かなかった。
(今夜は落ち着ける……)
それだけ思った。

「来てくれて、嬉しい……」
頬を擦り寄せて耳元で囁いた。
「俺も会いたかった」
「ほんとに泊ってもいいの?」
「明日まで旅行」
「そう。それで……」
「会いたかったのはそれだからじゃないよ」
「わかってる。でも、無理しないでね。あたしも気になっちゃうから」
 いくら動かさなくても圧迫は続いているのでだんだんと昂ぶってくる。滑らかな潤いが心地いい。
「初めて来たのに、落ち着く部屋だな」
呟いてから、やはり理恵がいるからだなと思った。

「有村くん。寂しいと思ったことある?」
理恵の目がライトに光った。
 寂しさの観点をどこに置くのか……。
「あるよ……」
「そうよね。家族があっても、子供がいても……」
「結局は、一人なのかな……」

 理恵が突然体を突っ張らせ、動き始めた。
「感じてきちゃった……イッテいい?」
訴えるように顔を歪めた。
「どうした?急に」
「だって、ずっと入ってて硬いんだもん。それだけで、ああ……」
「いいよ。俺も……」
理恵を抱えて突き上げた。
「あっ、ああ……」
二人の動きがハーモニーとなる。
「あ、イク、イク」
間もなくヒクヒクと痙攣が起こり、
「イッチャう!」
有村もたまらず跳ねる理恵にしがみついた。

 やがて弛緩した女体が重くのしかかってきて、荒い呼吸が続いた。脱力、放心して余韻の中をさまよっている様子であった。
 ややあって、溜息とともにもぞもぞと身を起こした。
「ごめんね。重かったでしょう?」
肘をついて横になる。
「あ……」
枕もとのティッシュに手を伸ばした。
「出てきた……」
股間を拭い、けだるい笑みを見せた。
「若い頃だったら大変……」
「洗って来る?」
「うん。一緒に入ろう」
 理恵はティッシュを股間に挟んだまま、やや前屈みの恰好で浴室に向かった。後ろ姿は年相応の贅肉に被われている。若さの片鱗も見られない。その体を目で追っているうちに不意に胸が熱くなった。なぜかわからない。体を合わせて安息を得たことは紛れもないことなのに、そしてたしかに満足を感じながら、彼女の体に悲しみの色を見たのである。

(寂しいと思ったことある?……)
孤独、不安……。
それは誰しも心の片隅にひっそり抱いているものではないだろうか。自分に寄り添ってくれる理恵と、彼女を求める自分。俺を求める理恵、彼女に癒されている自分。
(同じだ……みんなお互いだ……)
 誰かに、何かに縋りたい。強がっていたって無理をしているだけなのだ。美貴もそうなのだろう。妻もそうなのかもしれない。誰かがいるから自分の存在を確認できる。それだけは間違いのないことのようだ。打ち解けることはできなくてもいい。想いの一部でも理解できればそれでいい。それくらいのことは可能なように思えた。

「有村くん。おいでよ」
理恵の声が響いてきて、シャワーの音が聞こえた。


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