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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《トロイメライ》-10

「好きなの!あたしキョースケが好き!」
 言ってしまった。遂に…。なんか嘘っぽく響いている気がする。告白と言うのは、もっと緊張感が在るものだと思っていたが…妙に冷静な自分がいた。
 部員は驚き、皆が振り返る。
「いや…その…」
 口ごもるキョースケ。
「恋人なら教えてくれるでしょ?だって友達じゃないし。友達以上にキョースケの力になりたいよ」
 キョースケが驚いた顔で見詰める。
「キョースケの特別になりたい。苦しい時は側に居たいし、楽しい時は側で笑いたい。ねぇキョースケ…彼女いないんでしょ?」
 自分で言った一言一言が、まるで自分に言い聞かせている気がした。
 間違っちゃダメよ。こっちの方が正しいのよって背中を押された感じ。
 キョースケの表情が険しい。
「イチコ」
 視線が絡まる。胸がズキズキ痛い。
 あたしは、前に進まなくてはいけない…。

「俺、彼女いないから…とにかく…ゆっくり話したいから、一緒に帰ろう」
 ヒューヒューっ!周りで見ていた部員がヤジを飛ばす。こんなに人が居たとは気付かなかった。顔がほてる。
 そんな有様を見てキョースケも笑っている。
「早く行こっ!」
 恥ずかしくなって廊下を駆け出した。


 アパートまで二人並んで帰った。こんなに二人きりなのは初めてで、ちょっとドキドキする。
 キョースケはバイクを押しながら、あたしに歩調を合わせて歩く。他愛ないお喋り。

「えっと…まぁ入って!どぞどぞ」
「お邪魔します…」
 アパートに到着してキョースケを部屋に通す。キョースケが物珍しそうに辺りを見回している。
「あ…コーヒーにする?そういえばオレンジジュースもあったっけ」
「イチコ」
 気分を変えようと声を掛けたが、思ってたよりも厳しい声が返ってきた。
「…飲まないの?」
 キョースケは首を横に振り要らない事を示している。ドキドキしながら向かい合って床に腰を下ろした。
「イチコ。俺…」
「好き…なの」
「…」
「キョースケの友達じゃ嫌…」
「…。」
「恋人になりたい」
 何故か胸がズキズキ痛い。あたしはキョースケが好き…好きじゃないと……前に進めないんだよ……。
 思い切って抱き付いた。キョースケは黙ったまんま。沈黙が苦しい。
「………抱いて……」
 抱いてもらったら全てがハッキリする…。きっと二度と聖を想うことも無くなる。聖を忘れる為に………
 ギュッとキョースケが抱き締める。
「いいよ…しよ?」
 思ったより声が震えたが、キョースケはただキツく抱き締める。
「キョースケ、抱いてよぉ」
 キョースケがあたしを抱く気が無いのが、くっついた身体から伝わる。
 キョースケは力を込めたまま動かない。
「嫌…こんなのヤダ。キョースケぇ……」
「………ごめん。俺好きな奴がいるんだ。…イチコのほうが楽だからって傾きたいのは山々だけど、不器用だからさ…俺。」
 身体が離される。
 前に進めない…あたしからキョースケがいなくなったら……聖が好きだって、…全然無理なのに…また懲りずに、お婆ちゃんになるまで…きっと…。頭ん中はぐちゃぐちゃだ。


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